COVID-19ワクチンモデルナ筋注に係る医薬品リスク管理計画書(RMP)の概要(令和 3 年 7 月 7 日)
販売名 | COVID-19 ワクチンモデルナ筋注 |
有効成分 | CX-024414* * 融合前構造に安定化したSARS-CoV-2 ウイルスのスパイクタンパク質をコードする一本鎖 RNA |
製造販売業者 | 武田薬品工業株式会社 |
薬効分類 | 87631 |
提出年月 | 令和 3 年 7 月 |
Table of Contents
1. 医薬品リスク管理計画の概要
1.1 安全性検討事項
重要な特定されたリスク
ショック、アナフィラキシー
重要な特定されたリスクとした理由:
COVID-19 ワクチンモデルナ筋注(以下、本剤)の海外第 3 相臨床試験(mRNA-1273-P301 試験)において(データロックポイント:2020 年 11 月 25 日)、本剤接種との因果関係が否定できないショック、アナフィラキシーの症例の報告はなかった。海外における緊急使用許可(2020 年 12 月18 日)以降、2021 年 3 月 31 日までに、アナフィラキシー関連事象(MedDRA 標準検索式 アナフィラキシー反応)が 530 例報告された*。そのうち 244 例は、ブライトン分類 1)においてアナフィラキシーの症例定義(レベル 1~3)を満たし、残りの 286 例は、症例定義を満たさなかった(レベル 4 又は 5)。また、定義を満たした症例において女性の割合が多かった(79.5%)。ワクチン接種後 3 日間のリスクウィンドウに基づき、アナフィラキシーの報告率を検討したところ、本剤での報告率は 37.85 例/10 万人・年と算出され、この報告率は ACCESS(vACcine Covid-19monitoring readinESS)によって提供されている、欧州各国におけるアナフィラキシーの報告率(最大値 24.43 例/10 万人・年)2)よりも高かった。
重篤なアナフィラキシー、アナフィラキシーショックが複数例報告されていること及びショック、アナフィラキシーは生命を脅かす可能性があり医学的介入が必要となることから、重要な特定されたリスクとした。
*推定接種回数(2020年12月18日~2021年3月31日):78,494,588回
- Rüggeberg JU et al. Anaphylaxis: Case definition and guidelines for data collection, analysis, and presentation of immunization safety data. Vaccine. 2007; 25: 5675 – 84.
- Background rates of Adverse Events of Special Interest for monitoring COVID-19 vaccines.(http://www.encepp.eu/documents/DraftReport.pdf) (version 1.1)
医薬品安全性監視活動の内容及びその選択理由:
【内容】
- 通常の医薬品安全性監視活動
- 追加の医薬品安全性監視活動として、特定使用成績調査(COVID-19 の重症化リスクが高いと考えられる基礎疾患を有する者)を実施する。
【選択理由】
ショック、アナフィラキシーを含む過敏症等に関する国内外の発現状況や最新の知見を幅広く把握するとともに、特定使用成績調査(COVID-19 の重症化リスクが高いと考えられる基礎疾患を有する者)において、ショック、アナフィラキシーに関連した使用実態下での適正使用状況やリスク因子となる背景等の情報を収集するため。
リスク最小化活動の内容及びその選択理由:
【内容】
- 通常のリスク最小化活動として、添付文書の「2. 接種不適当者」、「8. 重要な基本的注意」、「9.1 接種要注意者」及び「11.1 重大な副反応」の項並びにワクチン接種を受ける人へのガイドに記載し、注意喚起する。
- 追加のリスク最小化活動として、以下を実施する。
- 医療従事者向け資材(適正使用ガイド)の作成及び提供
- 被接種者向け資材(COVID-19 ワクチンモデルナ筋注の接種を受ける方へ)の作成及び提供
【選択理由】
医療従事者及び被接種者に対して、本剤接種によるショック、アナフィラキシー発現のリスクについて確実に情報提供を行い、本剤の適正な使用がなされるよう理解を促すとともに被接種者の安全性確保を図るため。
重要な潜在的リスク
ワクチン関連呼吸器疾患増強(Vaccine-associated enhanced respiratory disease:VAERD)を含むワクチン関連疾患増強(Vaccine-associated enhanced disease:VAED)
重要な潜在的リスクとした理由:
本剤の海外第 3 相臨床試験(mRNA-1273-P301 試験)において、ワクチン関連疾患増強を示唆する報告はない。一方、海外における緊急使用許可(2020 年 12 月 18 日)以降、2021 年 3 月 31 日までに、COVID-19 症例が 1,659 例報告された*。ブライトンコラボレーションによるワクチン関連疾患増強を定義するためのガイドライン 1)を踏まえ、ワクチン接種日から COVID-19 発症日までの期間に関する情報のある 1,018 例について、COVID-19 発症日及びガイドラインにおける注目すべき臨床症状と一致する有害事象について評価したところ、疾患増強と特定される症例はなかった。したがって、緊急使用許可後に重篤例を含む COVID-19 症例が報告されているものの、現時点で、本剤によるワクチン関連疾患増強を示唆する十分な根拠はない。
ワクチン関連疾患増強の主な機序として、Th2 タイプの免疫応答に起因する好酸球浸潤を特徴とする気道炎症の誘発、及び中和活性をほとんど示さない抗体が Fc 受容体を介してウイルスをマクロファージ内へ取り込み、その結果として感染増強や病態の重症化等が想定されている 2)。
マウスを用いた SARS-CoV 及び MERS-CoV ワクチンの非臨床研究 3) 4)、並びにコットンラットを用いた RS ウイルスワクチンの非臨床研究 5)において、ワクチン接種に伴う疾患の増強が示唆されていることから、理論的に、SARS-CoV-2 ワクチン接種後、野生型 SARS-CoV-2 に曝露された被接種者において、疾患の増強、特に呼吸器疾患の増強を誘発し、重症化する可能性があると考えられる。
以上の理由により、重要な潜在的リスクとした。
*推定接種回数(2020年12月18日~2021年3月31日):78,494,588回
- Munoz FM et al. Vaccine associated enhanced disease: Case definition and guidelines for data collection, analysis, and presentation of immunization safety data Vaccine. 2021; 39 (22): 3053-66.
- Graham BS. Rapid COVID-19 vaccine development. Science. 2020; 368 (6494): 945-6.
- Bolles M et al. A Double-Inactivated Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus Vaccine Provides Incomplete Protection in Mice and Induces Increased Eosinophilic Proinflammatory Pulmonary Response upon Challenge. J Virol. 2011; 85 (23): 12201-15.
- Agrawal AS et al. Immunization with inactivated Middle East Respiratory Syndrome coronavirus vaccine leads to lung immunopathology on challenge with live virus. Hum Vaccin Immunother. 2016; 12 (9): 2351-6.
- Openshaw PJM et al. Immunopathogenesis of vaccine-enhanced RSV disease. Vaccine. 2002; 20: S27-S31.
医薬品安全性監視活動の内容及びその選択理由:
【内容】
- 通常の医薬品安全性監視活動
- 追加の医薬品安全性監視活動として以下を実施する。
- 一般使用成績調査(新型コロナワクチンの投与開始初期の重点的調査参加者の追跡調査)
- 特定使用成績調査(COVID-19 の重症化リスクが高いと考えられる基礎疾患を有する者)
- 製造販売後臨床試験(TAK-919-1501 試験)
- 海外第 3 相臨床試験(mRNA-1273-P301 試験)
【選択理由】
- 通常の医薬品安全性監視活動において、海外で実施する後ろ向きコホート研究(mRNA-1273-P903 試験)を含め、VAERD を含む VAED のリスクに関する国内外の知見(自発報告等を含む)を幅広く収集評価するため。
- 製造販売後臨床試験(TAK-919-1501 試験)、海外第 3 相臨床試験(mRNA-1273-P301 試験)及び一般使用成績調査(新型コロナワクチンの投与開始初期の重点的調査参加者の追跡調査)から得られる長期的な安全性情報、並びに特定使用成績調査(COVID-19 の重症化リスクが高いと考えられる基礎疾患を有する者)において得られる情報から、本剤接種後のVAERD を含む VAED の発現リスクについて更なる検討を行うため。
リスク最小化活動の内容及びその選択理由:
【内容】
- 通常のリスク最小化活動:なし
- 追加のリスク最小化活動として、医療従事者向け資材(適正使用ガイド)の作成及び提供を実施する。
【選択理由】
現時点において、本剤接種による VAED の発現リスクについては明確ではないため、添付文書での注意喚起は行わないが、製造販売後の VAED の発現状況に応じて、注意喚起の必要性を検討する。また、医療従事者に対して、本リスクに関する情報提供を行い、本剤の適正な使用がなされるよう理解を促すとともに被接種者の安全性確保を図るため。
重要な不足情報
妊婦及び授乳婦に接種した際の安全性
重要な不足情報とした理由:
妊娠と SARS-CoV-2 による感染症の重症化との明確な関連性及び妊婦が SARS-CoV-2 に感染した場合の児への影響を示す明確な根拠はないが、妊婦は、感染症の重症化リスクや早産のリスクが高いことを示唆する複数の研究結果がある 1)。
雌のラットを用いた本剤の生殖発生毒性試験の結果、毒性所見は認められていないものの、国内外の臨床試験において、妊娠又は授乳中の女性は組入れ対象から除外されており、本剤接種後の安全性情報が不足している。
また、厚生労働省から提供されている「新型コロナワクチンについての Q&A」によると、妊娠又は授乳中の方も、新型コロナワクチンを受けることができるとされており、製造販売後は、本剤の予防接種上の有益性等を考慮したうえで妊娠又は授乳中の女性を対象に接種される可能性がある。
以上の理由により、重要な不足情報とした。
- MMWR 2020: 69; 1635-40、MMWR 2020: 69; 1641-47
医薬品安全性監視活動の内容及びその選択理由:
【内容】
- 通常の医薬品安全性監視活動
- 追加の医薬品安全性監視活動として以下を実施する。
- 一般使用成績調査(新型コロナワクチンの投与開始初期の重点的調査参加者の追跡調査)
- 特定使用成績調査(COVID-19 の重症化リスクが高いと考えられる基礎疾患を有する者)
【選択理由】
- 通常の医薬品安全性監視活動において、海外で実施する観察研究(mRNA-1273-P902 試験)を含め、妊娠及び授乳婦に接種した際の安全性に関する国内外の知見(自発報告等を含む)を幅広く収集評価し、妊娠後の転帰を含む副反応発現状況を確認するため。
- 一般使用成績調査(新型コロナワクチンの投与開始初期の重点的調査参加者の追跡調査)及び特定使用成績調査(COVID-19 の重症化リスクが高いと考えられる基礎疾患を有する者)において、使用実態下での情報収集を行うため。
リスク最小化活動の内容及びその選択理由:
【内容】
通常のリスク最小化活動として、添付文書の「9.5 妊婦」及び「9.6 授乳婦」の項並びにワクチン接種を受ける人へのガイドに記載し、注意喚起する。
【選択理由】
医療従事者及び被接種者に対して、適正使用に関する情報を提供し、理解を促す必要があるため。
1.2 有効性に関する検討事項
該当なし
2. 医薬品安全性監視計画の概要
通常の医薬品安全性監視活動
通常の医薬品安全性監視活動の概要:
自発報告、文献・学会情報及び外国措置情報等の収集・評価・分析を実施し、それらの結果に基づく安全対策を検討し、実行する。
追加の医薬品安全性監視活動
市販直後調査
実施期間:販売開始後 6 ヵ月間
評価、報告の予定時期:調査終了後 2 ヵ月以内
一般使用成績調査(新型コロナワクチンの投与開始初期の重点的調査参加者の追跡調査)
【安全性検討事項】
ワクチン関連呼吸器疾患増強(Vaccine-associated enhanced respiratory disease:VAERD)を含むワクチン関連疾患増強(Vaccine-associated enhanced disease:VAED)、妊婦及び授乳婦に接種した際の安全性
【目的】
本調査は、本剤の製造販売承認後早期に接種される対象者に、本剤最終接種 28 日(先行接種者健康状況調査の観察期間終了日)後翌日から本剤最終接種 12 ヵ月後までの 11 ヵ月間追跡し、追跡期間中に認められた重篤な有害事象及び COVID-19 情報を収集し、本剤の長期的な安全性を確認する。
【実施計画】
- 調査期間:本調査の実施予定期間は以下のとおりとする。
先行するコホート調査の観察期間を最初に終了した症例の観察期間終了日翌日から本調査の最終調査対象者の観察期間終了まで(2021 年 7 月~2022 年 12 月を予定) - 予定症例数:先行するコホート調査の参加者(最大 20,000 人)のうち、本剤最終接種 28 日後から本剤最終接種から 12 ヵ月後までの 11 ヵ月間の追跡調査への参加に同意が得られた被接種者全例
- 実施方法:Web を介した電子的データ収集システム(以下、EDC)を利用した「中央登録方式」にて実施する。調査担当医師は、本調査への参加の同意取得の有無について、先行するコホート調査の調査票に情報を入力する。同意を得られた調査参加者の被接種者背景データが、本調査の登録症例としてデータ移管される。調査担当医師等は、同意を取得した被接種者について、EDC に情報を入力する。本調査は、契約締結施設において、本調査への参加について同意が得られた本剤被接種者全例を対象に調査する。本調査は、被接種者が必要に応じて記入する健康状況記録用紙に基づく問診等で得られた情報及び診療録等の記録から調査担当医師が実施計画書に基づき必要な情報を抽出する。観察期間は、本剤最終接種 28 日(先行接種健康状況調査の観察期間終了日)後翌日からの 11 ヵ月間。
【実施計画の根拠】
本剤を対象に実施される先行するコホート調査の参加者を対象に、同意が得られた全例の追跡調査を行う。
【節目となる予定の時期及びその根拠】
- 安全性定期報告時:安全性情報について包括的な検討を行うため。
- 中間報告書作成時:本調査で得られた安全性情報を早期に評価、分析し、必要に応じて公表するため、安全性評価が可能な症例について、当局、研究班と調整のうえで適切な頻度にて集計を実施する。
- 調査終了 9 ヵ月後(最終報告書作成時):登録症例全例のデータ固定後に最終集計を実施し、最終報告書を作成のうえ、提出する。
【当該医薬品安全性監視活動の結果に基づいて実施される可能性のある追加の措置及びその開始の決定基準】
節目となる時期に、以下の内容を含めた医薬品リスク管理計画書の見直しを行う。
- 新たなリスクが明らかになった場合には、添付文書の改訂及び資材の改訂又は医薬品リスク管理計画の変更要否を検討する。
- 新たな安全性検討事項の有無も含めて、本調査の計画内容の変更要否について検討する。
- 得られた結果を踏まえ、更なる検討が必要と判断する場合には、新たな安全性監視活動の実施要否を検討する。
特定使用成績調査(COVID-19 の重症化リスクが高いと考えられる基礎疾患を有する者)
【安全性検討事項】
ショック、アナフィラキシー、ワクチン関連呼吸器疾患増強(Vaccine-associated enhanced respiratory disease:VAERD)を含むワクチン関連疾患増強(Vaccine-associated enhanced disease:VAED)、妊婦及び授乳婦に接種した際の安全性
【目的】
本調査は、製造販売承認取得後において、COVID-19 の重症化リスクが高いと考えられる基礎疾患を有する者を対象に、本剤接種後に認められる有害事象及び COVID-19 情報を収集し、その安全性を確認する。
【実施計画】
- 調査期間:最初の登録症例の 1 回目接種開始日~最終登録症例の観察期間終了日(2021 年 6 月~2022 年 2 月予定)
- 登録期間:最初の登録症例の 1 回目接種開始日~最終登録症例の登録日(2021 年 6 月~2021 年 12月予定)
- 予定症例数:安全性解析対象例数として 1,000 例を収集する。
- 実施方法:本調査は、登録条件を満たす症例を目標症例数に達するまで中央登録方式にて実施する。調査担当医師は、登録条件に合致する被接種者を、本剤 1 回目接種から遅くとも28 日(2 回目接種まで)以内を目安に登録を行う。調査担当医師等は、同意を取得した被接種者について、EDC に情報を入力する。本調査は、契約締結施設において製造販売承認後に本剤が接種された症例を対象に実施する。観察期間は、本剤 1 回目接種日(1 日目)から 2 回目接種後 28 日間。ただし、1 回目接種のみ実施し、2 回目接種を何らかの理由で実施しなかった場合は、1 回目接種後 28 日間。
【実施計画の根拠】
製造販売承認直後には医療従事者を対象に、厚生労働省科学研究(指定研究)として、新型コロナワクチンの接種開始初期に重点的調査が計画されていることを考慮し、対象者の重複を避けること、及び国内臨床試験の対象が基礎疾患のない健康成人であることを踏まえ、既存の安全性情報がない国内の COVID-19 の重症化リスクが高いと考えられる基礎疾患を有する者を対象に本調査を行う。
COVID-19 の重症化リスクが高いと考えられる基礎疾患を有する者へのワクチンの接種時期を考慮すると、本調査の実施時期は限定されると考えられる。加えて、本調査は被接種者に対して同意説明、健康観察日誌の記載依頼及び日誌回収の計画があることから、医療機関の負担が大きいことも想定されるため、実施可能性の観点から設定した。
海外第 3 相臨床試験(mRNA-1273-P301 試験)の中間解析結果において、過敏反応が 233 例(1.5%)に認められたことから、本調査においてショック、アナフィラキシーを含む過敏反応に関する背景因子の検討を行う必要があると考える。1,000 例を収集した場合、過敏反応は 8 例以上を95%の確率で、10 例以上を 90%の確率で、12 例を 80%の確率で観察可能であり、過敏反応に関する背景因子の検討が可能と考えられる。また、0.1%(悪心)~5.2%(疲労)の頻度にて発現している重度の有害事象については、可能であれば併せて背景因子を検討する。さらに、発現割合が0.3%以上のその他の事象を 95%以上の確率で観察可能である。
【節目となる予定の時期及びその根拠】
- 安全性定期報告時:安全性情報について包括的な検討を行うため。
- 中間報告書作成時:本調査で得られた安全性情報を早期に評価、分析し、必要に応じて公表するため、安全性評価が可能な症例について、当局、研究班と調整のうえで適切な頻度にて集計を実施する。
- 調査終了 9 ヵ月後(最終報告書作成時):登録症例全例のデータ固定後に最終集計を実施し、最終報告書を作成のうえ、提出する。
【当該医薬品安全性監視活動の結果に基づいて実施される可能性のある追加の措置及びその開始の決定基準】
節目となる時期に、以下の内容を含めた医薬品リスク管理計画書の見直しを行う。
- 新たなリスクが明らかになった場合には、添付文書の改訂及び資材の改訂又は医薬品リスク管理計画の変更要否を検討する。
- 新たな安全性検討事項の有無も含めて、本調査の計画内容の変更要否について検討する。
- 得られた結果を踏まえ、更なる検討が必要と判断する場合には、新たな安全性監視活動の実施要否を検討する。
製造販売後臨床試験(TAK-919-1501 試験)
製造販売承認日以降は、日本人健康成人を対象としたプラセボ対照第1/2相臨床試験を製造販売後臨床試験に切り替え継続実施する。
【安全性検討事項】
ワクチン関連呼吸器疾患増強(Vaccine-associated enhanced respiratory disease:VAERD)を含むワクチン関連疾患増強(Vaccine-associated enhanced disease:VAED)
【目的】
20 歳以上の日本人健康成人男女を対象に、本剤を 28 日間隔で 2 回筋肉内接種したときの長期の安全性及び免疫原性を評価する。
【実施計画】
- 実施期間:製造販売承認取得日~2022 年 3 月
- 計画被験者数:200 例
- 評価項目:
- 主要評価項目:
- 安全性
- 治験期間を通して重篤な有害事象を発現した被験者数の割合
- 治験期間を通して診療を要した有害事象を発現した被験者数の割合
- 治験薬の接種日から治験期間を通して治験中止に至った有害事象を発現した被験者の割合
- 治験期間を通して SARS-CoV-2 に感染した被験者の割合
- 免疫原性
- 最終接種 6 ヵ月後(Day 209)及び 12 ヵ月後(Day 394)における SARS-CoV-2 に対する血清結合抗体価
- 安全性
- 副次的評価項目:
- 免疫原性
- 最終接種 6 ヵ月後(Day 209)及び 12 ヵ月後(Day 394)における SARS-CoV-2 に対する血清中和抗体価
- 免疫原性
- 主要評価項目:
【実施計画の根拠】
製造販売承認取得時に臨床試験に参画している被験者における長期の安全性及び有効性を検討する。
【節目となる予定の時期及びその根拠】
- 安全性定期報告時:安全性情報について包括的な検討を行うため。
- 試験終了 4 ヵ月後(報告書作成時):全被験者のデータ固定後に集計を実施し、報告書を作成のうえ、提出する。
【当該臨床試験の結果に基づいて実施される可能性のある追加の措置及びその開始の決定基準】
試験終了時に、以下の内容を含めた、医薬品リスク管理計画の見直しを行う。
- 試験結果に基づいて、添付文書及び資材等の改訂要否を検討する。
海外第 3 相臨床試験(mRNA-1273-P301 試験)
【安全性検討事項】
ワクチン関連呼吸器疾患増強(Vaccine-associated enhanced respiratory disease:VAERD)を含むワク
チン関連疾患増強(Vaccine-associated enhanced disease:VAED)
【目的】
18 歳以上の成人を対象とした、本剤の有効性、安全性及び免疫原性を評価する。
【実施計画】
- 実施期間:製造販売承認取得日~2022 年 10 月
- 計画被験者数:約 30,000 例
- 評価項目:
- 主要評価項目:
- 有効性
- 治験薬の 2 回目接種 14 日後以降に発症した初回の COVID-19 の予防に対する本剤の有効性(Vaccine Efficacy:VE)
- 安全性
- 治験薬各接種 7 日以内に発現した局所性特定有害事象(注射部位疼痛、紅斑/発赤、腫脹、硬結及び注射部位と同側の腋窩腫脹又は圧痛)及び全身性特定有害事象(頭痛、疲労、筋肉痛、関節痛、悪心・嘔吐、悪寒及び発熱)
- 治験薬各接種後 28 日までの非特定有害事象
- 全治験期間の中止に至った非特定有害事象
- 全治験期間の重篤な有害事象
- 有効性
- 副次的評価項目:
- 有効性
- 重症 COVID-19 発症予防に対する本剤の VE
- 治験薬の 2 回目接種 14 日後以降に発症した初回の COVID-19 又は SARS-CoV-2 感染に対する本剤の VE
- 治験薬の 2 回目接種 14 日後以降に発症した、副次的に定義した COVID-19 に対する本剤のVE
- 治験薬の 2 回目接種 14 日後以降に発症した COVID-19 合併症を直接の起因とする死亡の予防に対する本剤の VE
- 治験薬初回接種 14 日後以降に発症した初回の COVID-19 の予防に対する本剤の VE
- SARS-CoV-2 感染歴の有無を問わない、治験薬の 2 回目接種 14 日後以降に発症した初回のCOVID-19 の予防に対する本剤の VE
- 治験薬の 2 回目接種 14 日後以降に確認された初回の無症候性の SARS-CoV-2 感染の予防に対する本剤の VE
- 免疫原性
- Day 1、Day 29、Day 57、Day 209、Day 394 及び Day 759 の SARS-CoV-2 特異的中和抗体価値及び中和抗体価
- 有効性
- 主要評価項目:
【節目となる予定の時期及びその根拠】
- 安全性定期報告時:安全性情報について包括的な検討を行うため。
- 試験終了 4 ヵ月後(報告書作成時):全被験者のデータ固定後に集計を実施し、報告書を作成のうえ、提出する。
【当該臨床試験の結果に基づいて実施される可能性のある追加の措置及びその開始の決定基準】
試験終了時に、以下の内容を含めた、医薬品リスク管理計画の見直しを行う。
- 試験結果に基づいて、添付文書及び資材の改訂要否を検討する。
3. 有効性に関する調査・試験の計画の概要
該当なし
4. リスク最小化計画の概要
通常のリスク最小化活動
通常のリスク最小化活動の概要:
添付文書及びワクチン接種を受ける人へのガイドにより情報提供及び注意喚起を行う。
追加のリスク最小化活動
市販直後調査による情報提供
実施期間:販売開始後 6 ヵ月間
評価、報告の予定時期:調査終了後 2 ヵ月以内
医療従事者向け資材(適正使用ガイド)の作成及び提供
【安全性検討事項】
ショック、アナフィラキシー、ワクチン関連呼吸器疾患増強(Vaccine-associated enhanced respiratory disease:VAERD)を含むワクチン関連疾患増強(Vaccine-associated enhanced disease:VAED)
【目的】
- 本剤の有効性及び安全性に係る情報を医療従事者に提供する。
- ショック、アナフィラキシー、ワクチン関連呼吸器疾患増強(Vaccine-associated enhanced respiratory disease:VAERD)を含むワクチン関連疾患増強(Vaccine-associated enhanced disease:VAED)に関する注意喚起及びこれら副反応が認められた場合の対処方法等を医療従事者に提供する。
【具体的な方法】
医療従事者向けサイトに掲載するとともに必要に応じて本剤納入施設に提供し、資材の活用を依頼する。
【節目となる予定の時期及び実施した結果に基づき採択される可能性がある更なる措置】
安全性定期報告時及び調査・試験結果が得られた各時点において、ショック、アナフィラキシー、ワクチン関連呼吸器疾患増強(Vaccine-associated enhanced respiratory disease:VAERD)を含むワクチン関連疾患増強(Vaccine-associated enhanced disease:VAED)の発現状況を確認する。本結果から、リスク最小化活動の更なる強化が必要と判断される場合、新たな安全性検討事項又は現在の安全性検討事項において新たに注意すべき内容が認められた場合には、資材の改訂、配布方法等の実施方法の改訂及び追加の資材の作成等を検討する。
報告の予定時期:安全性定期報告時
被接種者向け資材(COVID-19 ワクチンモデルナ筋注の接種を受ける方へ)の作成及び提供
【安全性検討事項】
ショック、アナフィラキシー
【目的】
本剤の有効性及び安全性情報、接種後の注意事項及びショック、アナフィラキシーに係る注意事項について、確実な理解を促すための情報を被接種者及びその家族に対し提供する。
【具体的な方法】
医療従事者向けサイトに掲載するとともに必要に応じて本剤納入施設に提供し、資材の活用を依頼する。
【節目となる予定の時期及び実施した結果に基づき採択される可能性がある更なる措置】
安全性定期報告時及び調査・試験結果が得られた各時点において、ショック、アナフィラキシーの発現状況を確認する。本結果から、リスク最小化活動の更なる強化が必要と判断される場合、新たな安全性検討事項又は現在の安全性検討事項において新たに注意すべき内容が認められた場合には、資材の改訂、配布方法等の実施方法の改訂及び追加の資材の作成等を検討する。
報告の予定時期:安全性定期報告時
副反応発現状況の定期的な公表
【目的】
本剤の副反応の集計一覧を一定期間毎に作成し、医療従事者に提供することで本剤の適正使用を促し、安全性の確保を図る。
【具体的な方法】
医療従事者向けサイトに掲載する。
実施期間:市販直後調査期間
【節目となる予定の時期及び実施した結果に基づき採択される可能性がある更なる措置】
安全性定期報告時において、本剤の副反応の発現状況及び接種状況を確認する。本結果から、リスク最小化活動の更なる強化が必要と判断される場合、新たな安全性検討事項又は現在の安全性検討事項において新たに注意すべき内容が認められた場合には、本情報提供の継続の要否等について検討する。
報告の予定時期:安全性定期報告時
5. 医薬品安全性監視計画、有効性に関する調査・試験の計画及びリスク最小化計画の一覧
5.1 医薬品安全性監視計画の一覧
通常の医薬品安全性監視活動
自発報告、文献・学会情報及び外国措置情報等の収集・評価・分析を実施し、それらの結果に基づく安全対策を検討し、実行する。
追加の医薬品安全性監視活動
追加の医薬品安全性監視活動の名称 | 節目となる症例数/目標症例数 | 節目となる予定の時期 | 実施状況 | 報告書の作成予定日 |
市販直後調査 | 該当せず | 販売開始 6 ヵ月後 | 販売開始時より実施中 | 調査終了後 2 ヵ月以内 |
一般使用成績調査 (新型コロナワクチンの投与開始初期の重点的調査参加者の追跡調査) |
最大 20,000 例/ 最大 20,000 例 |
安全性定期報告時 | 計画中 | |
中間報告書作成時 | 中間報告書作成時 | |||
調査終了 9 ヵ月後(最終報告書作成時) | 調査終了 9 ヵ月後(最終報告書作成時) | |||
特定使用成績調査 (COVID-19 の重症化リスクが高いと考えられる基礎疾患を有する者) |
1,000 例/1,000例 | 安全性定期報告時 | 計画中 | 安全性定期報告時 |
中間報告書作成時 | 中間報告書作成時 | |||
調査終了 9 ヵ月後(最終報告書作成時) | 調査終了 9 ヵ月後(最終報告書作成時) | |||
製造販売後臨床試験 (TAK-919-1501 試験) |
200 例/200 例 | 安全性定期報告時 | 実施中 | 安全性定期報告時 |
試験終了 4 ヵ月後(報告書作成時) | 試験終了 4 ヵ月後(報告書作成時) | |||
海外第 3 相臨床試験 (mRNA-1273-P301 試験) |
約 30,000 例/約30,000 例 | 安全性定期報告時 | 実施中 | 安全性定期報告時 |
試験終了 4 ヵ月後(報告書作成時) | 試験終了 4 ヵ月後(報告書作成時) |
5.2 有効性に関する調査・試験の計画の一覧
該当なし
5.3 リスク最小化計画の一覧
追加のリスク最小化活動の名称 | 節目となる予定の時期 | 実施状況 |
市販直後調査による情報提供 | 販売開始 6 ヵ月後 | 販売開始時より実施中 |
医療従事者向け資材(適正使用ガイド)の作成及び提供 | 安全性定期報告時及び調査・試験結果が得られた各時点 報告の予定時期:安全性定期報告時 |
販売開始時より実施中 |
被接種者向け資材(COVID-19ワクチンモデルナ筋注の接種を受ける方へ)の作成及び提供 | 安全性定期報告時及び調査・試験結果が得られた各時点 報告の予定時期:安全性定期報告時 |
販売開始時より実施中 |
副反応発現状況の定期的な公表 | 安全性定期報告時 | 販売開始時より実施中 |
参照
販売名 | 承認取得者名 | 一般名 | RMP | 提出年月 | 添付文書・RMP資材等 |
COVID‐19ワクチンモデルナ筋注 | 武田薬品工業株式会社 | コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2) | RMP | 2021年05月 (2021年07月 更新) |
添付文書等 |