医薬品医療機器等

アイモビーグ皮下注 [エレヌマブ](審議結果報告書2021年6月1日)

審議結果報告書

令 和 3 年 6 月 1 日
医薬・生活衛生局医薬品審査管理課

[販売名]

アイモビーグ皮下注70 mgペン

[一般名]

エレヌマブ(遺伝子組換え)

[申請者名]

アムジェン株式会社

[申請年月日]

令和2年9月 15 日

[審議結果]

令和3年5月 26 日に開催された医薬品第一部会において、本品目を承認して差し支えないとされ、薬事・食品衛生審議会薬事分科会に報告することとされた。

本品目は生物由来製品に該当し、再審査期間は8年、原体及び製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当しないとされた。

[承認条件]

医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。

審査報告書

令和 3 年 5 月 10 日
独立行政法人医薬品医療機器総合機構

承認申請のあった下記の医薬品にかかる医薬品医療機器総合機構での審査結果は、以下のとおりである。

[販売名]

アイモビーグ皮下注 70 mg ペン

[一般名]

エレヌマブ(遺伝子組換え)

[申請者]

アムジェン株式会社

[申請年月日]

令和 2 年 9 月 15 日

[剤形・含量]

1 製剤(1 mL)中にエレヌマブ(遺伝子組換え)70 mg を含有する注射剤

[申請区分]

医療用医薬品(1)新有効成分含有医薬品

[特記事項]

なし

[審査担当部]

新薬審査第二部

[審査結果]

別紙のとおり、提出された資料から、本品目の片頭痛発作の発症抑制に関する有効性は示され、認められたベネフィットを踏まえると安全性は許容可能と判断する。

以上、医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本品目については、下記の承認条件を付した上で、以下の効能又は効果並びに用法及び用量で承認して差し支えないと判断した。なお、重篤な過敏症、重篤な便秘、高血圧及び心血管系事象の発現状況、妊婦における安全性、長期投与における安全性等について、さらに検討が必要と考える。

[効能又は効果]

片頭痛発作の発症抑制

[用法及び用量]

通常、成人にはエレヌマブ(遺伝子組換え)として 70 mg を 4 週間に 1 回皮下投与する。

[承認条件]

医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。

別紙

審査報告(1)
令和 3 年 3 月 18 日

起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等

本薬は、米国 Amgen 社により創製された、CGRP 受容体に対する遺伝子組換えヒト IgG2 モノクローナル抗体である。CGRP 受容体は、カルシトニン受容体様受容体及び受容体活性調節タンパク質から構成される複合体であり、三叉神経節、脳幹の三叉神経頸髄複合体及び脳の血管系等の片頭痛の病態生理に関連する部位等に発現している(J Cereb Blood Flow Metab 2002; 22: 620-9 等)。CGRP は、カルシトニンファミリーに属する 37 個のアミノ酸から構成される神経ペプチドであり、片頭痛発作時に血中 CGRP濃度が増加することが報告されている(Ann Neurol 1990; 28: 183-7 等)。本薬は、CGRP 受容体に結合し、CGRP の生理活性を阻害することにより、片頭痛発作の発症を抑制することが期待される。

本薬の臨床開発は、米国アムジェン社により 20■■年から開始され、片頭痛の予防に係る効能・効果で2018 年 5 月に米国で承認されて以降、2021 年 2 月現在、欧米を含む 67 の国又は地域で承認されている。本邦においては、20■■年からアステラス・アムジェン・バイオファーマ株式会社(現アムジェン株式会社)により本薬の臨床開発が開始され、今般、国内臨床試験成績等に基づき、「片頭痛患者における片頭痛の予防」を申請効能・効果として、医薬品製造販売承認申請がなされた。

機構における審査の概略

臨床的位置付けについて

申請者は、片頭痛治療における本剤の臨床的位置付けについて、以下のように説明した。片頭痛は、国内の有病率は 8.4%と推定され(Cephalalgia 1997; 17:15-22)、特に 30 歳代及び 40 歳代女性の有病率はそれぞれ 17.7%及び 18.4%と高いことが報告されている(Headache 2004; 44: 8-19)。国内において片頭痛は ICHD の診断基準に基づき診断され(慢性頭痛の診療ガイドライン 2013)、ICHD では、頭痛が 1カ月に 15 日以上の頻度で 3 カ月を超えて起こり、少なくとも 1 カ月に 8 日の頭痛で片頭痛の特徴を有するものが CM と定義されている。また、頭痛日数により、1 カ月あたりの頭痛日数が 15 日未満の片頭痛を EM、15 日以上の片頭痛を CM と分類されているが(Curr Pain Headache Rep 2012; 16: 86-92)、EMと CM の区分は厳密ではなく、EM から CM へ又はその逆へしばしば移行する等の連続性を有する疾患であるとされている(Neurology 2011; 76: 711-8、Headache 2008; 48: 1157-68)。

片頭痛に対する治療として、急性期には、通常、非ステロイド性抗炎症薬等の片頭痛に非特異的な薬剤とトリプタン系薬剤等の片頭痛に特異的な薬剤が用いられる。1 カ月あたりの片頭痛発作が 2 回以上又は片頭痛日数が 6 日以上の患者では、急性期治療のみでは日常生活に片頭痛発作による支障が残る場合、急性期治療薬が使用できない場合に、予防療法を行うことが推奨されている(慢性頭痛の診療ガイドライン 2013)。国内で片頭痛の予防療法に使用可能な薬剤には、経口剤ではバルプロ酸ナトリウム、プロプラノロール塩酸塩、ロメリジン塩酸塩等が、注射剤ではガルカネズマブ(遺伝子組換え)があるが、これら経口剤の忍容性は必ずしも良好ではなく(Headache 2013; 53: 644-55)、副作用のために投与を中止せざるを得ないこともある。また、ガルカネズマブ(遺伝子組換え)と本薬を直接比較した臨床試験は実施されておらず、それぞれの薬剤で実施された臨床試験の試験デザイン等が異なるため、試験成績を直接比較することに限界はあるものの、月間片頭痛日数のベースラインからの変化量に明らかな違いはなく、安全性の観点からも大きな問題となる差異は示されていないと考える。

EM 患者を対象とした国内第Ⅱ相試験並びに EM 及び CM 患者を対象とした国内第Ⅲ相試験において、本薬の片頭痛に対する予防療法としての有効性が示され、安全性及び忍容性は良好であったことから、本薬は CGRP 受容体を標的とする新規作用機序の薬剤として、片頭痛の予防療法における新たな治療選択肢になると考える。また、欧米の診療ガイドライン(Headache 2019; 59: 1-18、J Headache Pain 2019; 20:6)では、本薬を含む抗 CGRP 受容体抗体及び抗 CGRP 抗体について、臨床試験において有効性、安全性及び忍容性が示され、早い効果発現や、既存の経口薬による予防療法の失敗例や使用例でも効果が期待できるとされている。

機構は、以下のように考える。片頭痛患者の多くを 20~40 歳代の女性を始めとする働き盛りの世代が占め、片頭痛発作による頭痛や悪心・嘔吐等により日常生活及び社会的活動に支障をきたす場合もあることから、片頭痛発作の発症を抑制する治療の意義は大きい。本薬は CGRP 受容体を標的とする新規の作用機序を有すること、国内臨床試験において、本薬の臨床的意義のある有効性と許容可能な安全性が示されたこと、並びに EM 及び CM のいずれにおいてもベネフィットが期待できることから(「7.R.3 有効性について」及び「7.R.4 安全性について」の項参照)、本剤を片頭痛発作の予防療法における新たな選択肢として臨床現場に提供する意義はあるものと判断する。ただし、本薬には既存の抗 CGRP 抗体と同様にアナフィラキシーを含む過敏症や注射部位に生じる副作用のリスクがあることに加え、重度の便秘及び高血圧の悪化等の発現が報告されていることについて医療従事者及び患者に十分な注意喚起を行うとともに、本剤を含めた複数の治療選択肢の中から患者に適した薬剤を選択できるよう本剤の特徴を情報提供する必要がある(「7.R.4.1 過敏症関連の有害事象について」、「7.R.4.2 注射部位関連の有害事象について」、「7.R.4.3 心血管関連の有害事象について」及び「7.R.4.4 消化器関連の有害事象について」の項参照)。

臨床データパッケージの適切性について

申請者は、本邦での本薬の開発経緯について、以下のように説明した。本薬の臨床開発は海外で先行していたこと、日本人を含む健康被験者を対象とした第Ⅰ相試験(20120130 試験)の結果、日本人と白人における本薬 70 mg での PK プロファイルは類似しており(「6.R.2 PK の国内外差について」の項参照)、日本人に本薬 140 mg までを皮下投与した際の安全性プロファイルは外国人被験者を対象とした単回投与試験(20101267 試験)の安全性プロファイルと同様であったこと等から、当初、ブリッジング戦略により海外第Ⅲ相試験の成績を日本人に外挿することで臨床データパッケージを構築することを計画した。しかしながら、海外第Ⅲ相試験(20120296 試験)をブリッジング対象試験、国内第Ⅱ相試験(20120309 試験)をブリッジング試験と位置付け、EM 患者における本薬の用量反応関係の類似性を評価した結果、20120309 試験では 20120296 試験で認められた 140 mg 群の有効性が 70 mg 群を上回るという用量反応関係が認められなかったこと等から、ブリッジングの成立は困難と判断した。その後、20120309 試験の結果に基づき、日本人における推奨用量は本薬 70 mg であると考え、本薬 70 mg の有効性を検証するための国内第Ⅲ相試験(20170609 試験)を実施した。当該試験では、EM と CM は一つの疾患の連続的な病態であるとの考えに基づき、EM 患者及び CM 患者のいずれも組入れ可能とした。その結果、本薬の有効性が検証され、EM 及び CM の各部分集団でも臨床的に意義のある有効性が認められたこと(「7.R.3 有効性について」の項参照)等から、国内第Ⅱ相試験(20120309 試験)を用量設定試験、国内第Ⅲ相試験(20170609 試験)を検証試験と位置付け、臨床データパッケージを構成した。なお、欧米における本薬の承認用法・用量は EM と CM によらず同一であることからも、国内第Ⅲ相試験(20170609 試験)で EM 患者及び CM 患者をまとめて評価したことの妥当性が支持されると考える。機構は、以下のように考える。20120296 試験及び 20120309 試験の結果(「7.3.2 海外第Ⅲ相試験」及び「7.2.1 国内第Ⅱ相試験」の項参照)からは、本薬の用量反応関係、及び推奨用法・用量(140 mgへの増量の可否)が国内外で異なることが示唆されている一方で、20120309 試験の結果から日本人患者における推奨用量が検討可能であったことから、計画時はブリッジング試験として実施した 20120309 試験を用量設定試験と位置付け、日本人患者を対象とした検証的試験を実施したことは妥当と判断する。

また、本邦の承認申請において検証的試験と位置付けられる 20170609 試験で EM と CM の両方を対象としたことも、以下の点を踏まえると妥当と判断する。

  • EM と CM は連続的な病態である疾患とみなすことができるとした申請者の主張は妥当であり、これらの患者における治療目的はいずれも片頭痛発作頻度の減少であること。
  • 20170609 試験より前に実施されていた海外臨床試験(20120295 試験及び 20120296 試験)において、EM と CM における本薬の有効性及び安全性は同様であり、20170609 試験の計画時点での海外の推奨用法・用量は EM と CM で同一と推定されたこと(「7.R.6.1 日本人における用法・用量の設定について」の項参照)。

参照

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