医薬品医療機器等

eCTDの歴史と各地域での実装

2022年2月26日

ICH M8専門家作業部会
ICH電子化コモン・テクニカル・ドキュメント(eCTD)v4.0
実装ガイドv1.4
2021年6月2日

全般的な背景とeCTDの歴史

ICH M2専門家作業部会(Expert Working Group:EWG)によって開発されたeCTDの仕様は、ICH M4 EWGが発行したCTDで定義されている内容に基づいている。eCTDの構造とコンテンツは、CTDで指定された詳細な構造とレベルを使用して定義されているが、CTDには承認事項一部変更承認申請として提出可能な文書について記載されていない。eCTDは、企業から規制当局へ規制情報を送信するための手段として定義されているが、同時に、電子申請書類の作成、審査、ライフサイクル管理、保管を円滑化することも考慮されている。

このほか、M2 EWGはStudy Tagging File(STF)の仕様も策定した。STFは、モジュール4およびモジュール5の各試験の内容を体系化すべく、試験に関連するファイルを識別するために開発された。eCTD v3.2.2申請において、STFは米国では必須であるが、欧州では不要であり、カナダではノード拡張しない場合において必須とされ、日本では禁止されている。

eCTDの実装は地域別に実施された。これについては次のセクションで説明する。eCTD全体としては順調に運用され、グローバルな申請も促進されたが、eCTD v3.2.2の実装後にいくつかの変更要求が発生したため、M2は2009年に次期メジャー・バージョンへの要件を整理した。2010年11月、eCTD仕様の改善に対応するために、eCTD v4.0の開発と実装を目的としてM8 EWGが創設された。

M8はRPSメッセージがICHの要件を満たすよう、HL7プロセスを通じてeCTD v4.0に取り組んだ。HL7の詳細については、セクション3.3を参照のこと。RPSモデルには、モジュール2~5を対象としたICH統一要件とICH地域要件の両方が組み込まれている。2014年9月、RPS Release 2はHL7 Version 3 Normative標準規格として認定された。

ICH地域およびオブザーバー国での実装

本セクションでは、これまでのeCTD v3.2.2の実装を概説する。これらの情報は、eCTD v4.0要件収集活動開始以前にeCTD v3.2.2を実装した各ICH地域から提供されている。

注:この他にも2011年以降にeCTD v3.2.2を実装したICH地域がある。

カナダ

企業とのやり取りおよび申請書類の複雑さおよび量の増大に対処するために、2004年、カナダ保健省はICHが確立したeCTD形式での申請の受け入れを開始した。2009年以降、eCTD形式での申請件数の割合は9.6%から70%に増加したのに対し、カナダ保健省が紙形式で受け取った申請件数は約85%減少した。

カナダ保健省は申請者に対してeCTD形式での電子的申請を強く推奨すると同時に、カナダでの電子的申請におけるeCTD形式の使用を義務化するための次のステップを確立しつつある。

欧州連合(EU)

1990年代前半、仕様ベースの電子化申請の開発が欧州で開始された。このとき策定された定義は、現在も各国で存続している。1992年、ドイツの監督官庁(Bundesinstitut für Arzneimittel und Medizinprodukte、BfArM)に対し、初めてDAMOS(Drug Application Methodology with Optical Storage)形式での申請が行われた。Hypertext Markup Language(HTML)をベースにしたMANSEV(Market Authorization by Network Submission and Evaluation)と呼ばれる別の形式がフランスで開発されたが、実装には至らなかった。これらの欧州形式と、欧州レベルで調和する取り組みは、ICH eCTD仕様に取って代わられた。

ICH eCTD仕様は2002年に欧州で採用された(ICH Step 5)。この形式での申請件数は、時間をかけてゆっくりと増加していった。企業と規制当局での採用があまり進んでいないことから、2007年にeCTDとは異なる形式が導入された。この形式はCTDの構造を踏襲しているが、ライフサイクル管理には対応していない。これはnon-eCTD electronic submission(NeeS)と名付けられ、eCTDの本格的な実装への足掛かりになると考えられた。

2005年には、電子化申請の本格的実装に向け、EUの医薬品規制当局代表(Heads of Medicines Agencies:HMA)は、2010年までにすべてのEU規制当局がeCTDの提出を受付できるよう、EU全体で取り組むことで合意し、電子署名は義務づけないこととした。欧州医薬品庁(European Medicines Agency:EMA)は、2008年7月1日から、推奨される形式としてeCTDによる電子形式のみの申請の受け入れを開始し、紙資料の追加提出を要求しないこととした。2010年1月1日には、ヒト用医薬品の中央承認審査方式にeCTD形式での申請が義務づけられた。分散承認審査方式の新規申請では2015年7月1日からeCTD形式が義務づけられた。相互認証審査方式の新規申請では2017年1月1日までにeCTD形式が義務づけられる。

合意された戦略は、欧州医薬品規制ネットワーク(European Medicines Regulatory Network:ERMNまたは「ネットワーク」)全体でヒトおよび獣医用医薬品向けの安全で一貫性のある効率的な電子化申請プロセスを確立することを目指しており、eCTD v4.0はこれを様々な面でサポートする必要がある。

日本

医薬品医療機器総合機構(Pharmaceuticals and Medical Devices Agency:PMDA)は、2004年に参考eCTD、2005年にeCTD正本の受付を開始した。日本でのeCTD申請件数は数年をかけて徐々に増加したが、2009年にeCTD v3.2.2が実装されると、eCTD正本の申請件数は急増した。2015年12月時点では、日本での新薬申請の大半はeCTD形式で提出されている。

スイス

2010年1月、スイス医薬品局(Swissmedic)は唯一の電子化申請専用の形式としてeCTD v3.2.2を導入した。それ以降の1年あたりのeCTD申請件数は徐々に増加し、2015年中頃までには全製造販売承認申請(変更を含む)の約15%に達した。スイスでの新規申請はほぼ100%がeCTD形式で提出されている。スイスでは電子化申請のみならずeCTDさえ義務化する法的根拠がないことが、eCTDの利用が進まない主な理由であると考えられる。しかし、スイス医薬品局へのすべての申請でeCTD形式の使用が推奨されている。

米国

2003年、ガイドラインおよび仕様がICH Step 4に到達し、ICH調和3極ガイドラインとして採用されると、米国食品医薬品局(United States Food and Drug Administration:FDA)は、eCTD v3.0申請の受付を開始した。2003年9月1日、FDAは評価を目的としてeCTD申請の受付を試験的に開始した。この申請の受付については、2003年8月27日発行の「the Electronic Submissions Public Docket No. FDA-1992-S-0039」の覚書27と、同時に発行されたFDAへのeCTD申請の技術仕様で通知された。

2007年9月13日、FDAは覚書33を発行し、製造販売および研究に関する承認申請について、eCTD形式での申請の受付準備が整ったことを発表した。この覚書によって、eCTD以外の形式での電子化申請を認めていたそれまでの指針は廃止された。2008年1月1日より、eCTD v3.2.2はFDAへの電子化申請にあたり、推奨される形式となった。

2015年5月5日、FDAはガイダンス「Providing Regulatory Submissions in Electronic Format – Certain Human Pharmaceutical Product Applications and Related Submissions Using the eCTD Specifications」を公表した。このガイダンスでは、2017年5月以降の製造販売承認申請はeCTD形式によることを求めている。

参照

厚生労働省法令等データベースサービス薬生薬審発0218第4号 > 別紙3 ICH電子化コモン・テクニカル・ドキュメント(eCTD)v4.0 実装ガイドv1.4

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