統合指針(人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針)の第6研究計画書に関する手続きは、大きく次の6つの項目から構成されます。
- 研究計画書の作成・変更
- 倫理審査委員会への付議
- 研究機関の長による許可等
- 研究の概要の登録
- 研究の適正な実施の確保
- 研究終了後の対応
Table of Contents
1 研究計画書の作成・変更
⑴ 研究責任者は、研究を実施( 研究計画書を変更して実施する場合を含む。以下同じ。)しようとするときは、あらかじめ研究計画書を作成しなければならない。
現行の倫理指針では「研究責任者は、研究を実施しようとするときは、あらかじめ研究計画書を作成し、研究機関の長の許可を受けなければならない。」と、研究機関の長の許可を受けることが求められていますが、この部分が除かれています。
⑵ 研究責任者は、⑴ の研究計画書の作成に当たっては、研究の倫理的妥当性及び科学的合理性が確保されるよう考慮しなければならない。また、研究対象者への負担並びに予測されるリスク及び利益を総合的に評価するとともに、負担及びリスクを最小化する対策を講じなければならない。
⑶ 多機関共同研究を実施する研究責任者は、当該多機関共同研究として実施する研究に係る業務を代表するため、当該研究責任者の中から、研究代表者を選任しなければならない。
現行の倫理指針の記載は「研究責任者は、他の研究機関と共同して研究を実施しようとする場合には、各共同研究機関の研究責任者の役割及び責任を明確にした上で研究計画書を作成しなければならない。」です。新しい統合指針では、「当該研究責任者の中から、研究代表者を選任」することが新しく追加になりました。
ですが、現行の倫理指針でも、ガイダンスの方に「各共同研究機関の研究責任者の中から、研究代表者(統括責任者)を置いた場合は、その旨を記載する必要がある。」という記載があるので、この部分は全く新しく追加になったというわけではなく、ガイダンスに書かれていたものが指針本体にランクアップして追加されたという位置づけでしょう。
⑷ 研究代表者は、多機関共同研究を実施しようとする場合には、各共同研究機関の研究責任者の役割及び責任を明確にした上で一の研究計画書を作成しなければならない。
これも今回新しく追加になったものです。
⑸ 研究責任者は、研究に関する業務の一部について委託しようとする場合には、当該委託業務の内容を定めた上で研究計画書を作成しなければならない。
ここの記載はもともとありました。
⑹ 研究責任者は、研究に関する業務の一部を委託する場合には、委託を受けた者が遵守すべき事項について、文書による契約を締結するとともに、委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない。
現行の指針では、委託先の監督は研究機関の長の責務でしたが、今回の統合指針では研究責任者の責務になったので、その部分との整合性を取るための一文ですね。
⑺ 研究責任者は、侵襲( 軽微な侵襲を除く。) を伴う研究であって通常の診療を超える医療行為を伴うものを実施しようとする場合には、当該研究に関連して研究対象者に生じた健康被害に対する補償を行うために、あらかじめ、保険への加入その他の必要な措置を適切に講じなければならない。
「侵襲あり、かつ、介入あり」の研究の場合は、保険への加入が求められます。
2 倫理審査委員会への付議
⑴ 研究責任者は、研究の実施の適否について、倫理審査委員会の意見を聴かなければならない。
⑵ 研究代表者は、原則として、多機関共同研究に係る研究計画書について、一の倫理審査委員会による一括した審査を求めなければならない。
複数の研究機関が参加する研究の場合、1つの倫理審査委員会による一括審査が原則となりました。
今まではここまでしっかりと明記されてはいなかったので、大きな変更の1つです。
⑶ 研究責任者は、倫理審査委員会に意見を聴いた後に、その結果及び当該委員会に提出した書類、その他研究機関の長が求める書類を研究機関の長に提出し、当該研究機関における当該研究の実施について、許可を受けなければならない。ただし、公衆衛生上の危害の発生又は拡大を防止するため緊急に研究を実施する必要があると判断される場合には、倫理審査委員会の意見を聴く前に研究機関の長の許可のみをもって実施することができる。この場合において、研究責任者は、許可後遅滞なく倫理審査委員会の意見を聴くものとし、倫理審査委員会が研究の停止若しくは中止又は研究計画書の変更をすべきである旨の意見を述べたときは、当該意見を尊重し、研究を停止し、若しくは中止し、又は研究計画書を変更するなど適切な対応をとらなければならない。
⑷ 研究責任者は、多機関共同研究について⑵ の規定によらず個別の倫理審査委員会の意見を聴く場合には、共同研究機関における研究の実施の許可、他の倫理審査委員会における審査結果及び当該研究の進捗に関する状況等の審査に必要な情報についても当該倫理審査委員会へ提供しなければならない。
3 研究機関の長による許可等
⑴ 研究機関の長は、研究責任者から研究の実施又は研究計画書の変更の許可を求められたときは、倫理審査委員会の意見を尊重しつつ、当該研究の実施の許可又は不許可その他研究に関し必要な措置について決定しなければならない。この場合において、研究機関の長は、倫理審査委員会が研究の実施について不適当である旨の意見を述べたときには、当該研究の実施を許可してはならない。
⑵ 研究機関の長は、当該機関において行われている研究の継続に影響を与えると考えられる事実又は情報について知り得た場合には、必要に応じて速やかに、研究の停止、原因の究明等の適切な対応をとらなければならない。
⑶ 研究機関の長は、研究の実施の適正性若しくは研究結果の信頼を損なう事実若しくは情報又は損なうおそれのある情報について知り得た場合には、速やかに必要な措置を講じなければならない。
4 研究の概要の登録
⑴ 研究責任者は、介入を行う研究について、厚生労働省が整備するデータベース( Japan Registry of Clinical Trials: jRCT ) 等の公開データベースに、当該研究の概要をその実施に先立って登録し、研究計画書の変更及び研究の進捗に応じて更新しなければならない。また、それ以外の研究についても当該研究の概要をその研究の実施に先立って登録し、研究計画書の変更及び研究の進捗に応じて更新するよう努めなければならない。
介入研究は、jRCTへの登録が義務化されました。これも大きな変更点です。
⑵ ⑴ の登録において、研究対象者等及びその関係者の人権又は研究者等及びその関係者の権利利益の保護のため非公開とすることが必要な内容として、倫理審査委員会の意見を受けて研究機関の長が許可したものについては、この限りでない。
5 研究の適正な実施の確保
⑴ 研究責任者は、研究計画書に従って研究が適正に実施され、その結果の信頼性が確保されるよう、当該研究の実施に携わる研究者をはじめとする関係者を指導・管理しなければならない。
⑵ 研究責任者は、侵襲( 軽微な侵襲を除く。) を伴う研究であって介入を行うものの実施において、予測できない重篤な有害事象が発生した場合であって当該研究との直接の因果関係が否定できないときは、倫理審査委員会に意見を求め、その意見を尊重するとともに、必要に応じて速やかに、研究の停止、原因の究明等の適切な対応を取らなければならない。
6 研究終了後の対応
⑴ 研究責任者は、研究を終了( 中止の場合を含む。以下同じ。) したときは、その旨及び研究結果の概要を文書により遅滞なく倫理審査委員会に報告すると同時に、研究機関の長に文書により報告しなければならない。
⑵ 研究責任者は、研究を終了したときは、遅滞なく、研究対象者等及びその関係者の人権又は研究者等及びその関係者の権利利益の保護のために必要な措置を講じた上で、当該研究の結果を公表しなければならない。また、侵襲( 軽微な侵襲を除く。) を伴う研究であって介入を行うものについて、結果の最終の公表を行ったときは、遅滞なく研究機関の長へ報告しなければならない。
⑶ 研究責任者は、介入を行う研究を終了したときは、4 ⑴ で当該研究の概要を登録した公開データベースに遅滞なく、当該研究の結果を登録しなければならない。また、それ以外の研究についても当該研究の結果の登録に努めなければならない。
⑷ 研究責任者は、通常の診療を超える医療行為を伴う研究を実施した場合には、当該研究を終了した後においても、研究対象者が当該研究の結果により得られた最善の予防、診断及び治療を受けることができるよう努めなければならない。