エビデンス全般

科学的介護における重要指標―Barthel Index、Vitality Index、低栄養のリスクレベル、嚥下調整食の食形態

2021年5月29日

科学的介護の実践にあたって、いくつかの鍵となる指標が存在します。

全て網羅はできませんが、代表的なものをご紹介します。

Barthel Index

Barthel Index は、は日常生活活動(ADL)を評価するための指標であり、10 項目からなります。

総計は最高100点、最低0点となり、点数が高いほど動作の自立度が高いことを表します。すべて自立していると100点になる計算です。

各項目は15 点、10 点、5点、0点で評価し、自立だと10点または15点に、全介助や項目の動作が行えない場合は0点となります。

どの項目も対象者が少しでも介助や見守りを要し、そばに誰かいなければ動作を安全に行えない場合は自立になりません。

バーセルインデックスの評価は各項目の動作をできるかどうかについて、普段の状況を踏まえ、必要に応じ実際に利用者に動作を行ってもらい評価します。

食事の場面や入浴の場面など、実際の場面で評価することが望ましいですが、聞き取りでも構いません

項目 15点 10点 5点 0点
① 食事 皿やテーブルから自力で食物をとって、食べることができる。自助具を用いても良い。食事を妥当な時間内に終える。 食事になんらかの介助・監視が必要(食べ物を切り刻むなど) 食事にほぼすべて介助が必要。
② 車椅子とベッドの移乗 移乗動作のすべての動作が可能(車椅子を安全にベッドに近づける。ブレーキをかける。フットレストを持ち上げる。ベッドへ安全に移る。臥位になる。ベッドの縁に腰掛ける。車椅子の位置を変える。これらの逆の動きも。) 左記の移乗動作(1つ以上)について、最小限の介助または安全のための指示や監視が必要。 自力で臥位から起き上がって腰掛けられるが、移乗に介助が必要。 移乗のほぼすべてに介助や監視が必要。全介助。
③ 整容 一連の整容動作と管理ができる。手と顔を洗う。整髪する。歯を磨く。髭を剃る(道具は何でも良いが、引き出しからの出納も含めて道具の操作、管理が介助なしにできる)。

女性は化粧も含む。(ただし、髪を編んだり、髪型を整えることは除く)

整容のほぼすべてに介助や監視が必要。
④ トイレ動作 トイレの出入り(腰掛け、離れを含む)。ボタンやファスナーの着脱と汚れないための準備、トイレットペーパーの仕様、手すりの使用は可。トイレの代わりに差し込み便器を使う場合は、便器の洗浄管理ができる。 バランス不安定、衣服操作、トイレットペーパーの使用に介助が必要。 トイレ動作のほぼすべてに介助や監視が必要。
⑤ 入浴 浴槽に入る、シャワーを使う、スポンジで洗う、このすべてがどんな方法でも良いが、他人の援助なしで入浴が可能。 左記の入浴動作について他人の介助や監視が必要。
⑥ 移動 介助や監視なしに45m以上歩ける。義肢・装具や杖・歩行器(車付きを除く)を使用して良い。装具使用の場合には、立位や座位でロック操作が可能なこと。装着と取り外しが可能なこと。 上記事項について、わずかの介助や監視があれば45m以上歩ける。 歩くことはできないが、自力で車椅子の操作ができ、移動できる。角を曲がる、方向転換、テーブル、ベッド、トイレなどへの操作等。45m以上移動できる。患者が歩行可能な時は車椅子使用は採点しないで自立もしくは部分自立を採用。 車椅子でも45mの移動ができない。上記操作がに介助を要す。
⑦ 階段昇降 介助や監視なしに安全に階段の昇降ができる。手すり、杖、クラッチの使用可能。杖を持ったままの昇降も可能。 左記の階段昇降について、介助や監視が必要。 介助しても階段昇降が困難。
⑧ 更衣 通常つけている衣類、靴、装具の着脱(細か着かたまでは必要な条件としない:実用性があれば良い)が行える。 左記の更衣項目について、介助を要するが。作業の半分以上は自分で行え、妥当な時間内に終了する。
⑨ 排便自制 排便の自制が可能で失敗がない。脊髄損傷患者等の排便訓練後の座薬や官庁の使用を含む。 座薬や浣腸の使用に介助を要したり、時々失敗する。 排便に関わることはほぼ介助を受け、たびたび失敗する
⑩ 排尿自制 昼夜ともに排尿自制が可能。脊髄損傷患者の場合、集尿バッグ等の装着・清潔保持が自立としている。 排尿自制にときどき失敗がある。トイレに行くことや尿器の準備が間に合わなかったり、集尿バッグの操作に介助が必要。 排尿に関わることはほぼ介助を受け、たびたび失敗する。

注意

各項目の Barthel Index の点数は、利用者の実際の生活における状況(「している」ADL)を必ずしも反映しないことに注意が必要です。

例えば、ある利用者の総計が100点だったとしても実施可能な能力を有している事を示しており、実際の生活場面では全項目を独力で行っているとは限りません

本人の状況や生活環境を十分に考慮する必要があります。

評価頻度については、目安として3 か月に 1 回実施するのがよいでしょう。

ただし、入院や退院などの生活環境の変化や身体機能の変化等があった場合には、その都度評価を行うことをおすすめします。

認知症行動障害尺度(Dementia Behavior Disturbance Scale:DBD13)

認知症を有する方の行動・心理症状(BPSD)について評価します。

13 項目の各項目を0:まったくない、1:ほとんどない、2:ときどきある、3:よくある、4:常にあるの5段階で評価します。

すべての項目の点数の合計で評価されます。

13 項目について「まったくない」場合は0点となるように、点数が低い場合は行動・心理症状の発現が少なく、合計点が高い場合は行動・心理症状の発現が多い結果となります。

DBD13の評価項目

同じことを何度も何度も聞く 0 ・ 1 ・ 2 ・ 3 ・ 4
よく物をなくしたり、置場所を間違えたり、隠したりしている 0 ・ 1 ・ 2 ・ 3 ・ 4
日常的な物事に関心を示さない 0 ・ 1 ・ 2 ・ 3 ・ 4
特別な理由がないのに夜中起き出す 0 ・ 1 ・ 2 ・ 3 ・ 4
特別な根拠もないのに人に言いがかりをつける 0 ・ 1 ・ 2 ・ 3 ・ 4
昼間、寝てばかりいる 0 ・ 1 ・ 2 ・ 3 ・ 4
やたらに歩き回る 0 ・ 1 ・ 2 ・ 3 ・ 4
同じ動作をいつまでも繰り返す 0 ・ 1 ・ 2 ・ 3 ・ 4
口汚くののしる 0 ・ 1 ・ 2 ・ 3 ・ 4
場違いあるいは季節に合わない不適切な服装をする 0 ・ 1 ・ 2 ・ 3 ・ 4
世話されるのを拒否する 0 ・ 1 ・ 2 ・ 3 ・ 4
明らかな理由なしに物を貯め込む 0 ・ 1 ・ 2 ・ 3 ・ 4
引き出しやたんすの中身を全部だしてしまう 0 ・ 1 ・ 2 ・ 3 ・ 4

Vitality Index

利用者の意欲に関する評価であり、5 項目の評価をそれぞれ 0 点・1 点・2 点の 3 段階で評価します。

すべての項目の合計点数で評価し、合計点数が高いほど、意欲が高いことを示します。

起床
  • 2点.いつも定時に起床している
  • 1点.起こさないと起床しないことがある
  • 0点.自分から起床することがない判定上の注意 薬剤の影響(睡眠薬など)を除外。起座できない場合、開眼し覚醒していれば2点
自分から起床できるかどうかを問います。

睡眠薬などで起きられないという場合は除外します。

また体を起こすことができない場合には目を開けて意思疎通可能な状態で覚醒していれば2点と採点します。

意思疎通
  • 2点.自分から挨拶する、話しかける
  • 1点.挨拶、呼びかけに対し返答や笑顔がみられる
  • 0点.反応がない判定上の注意 失語の合併がある場合、言語以外の表現でよい。
挨拶をしたり挨拶に反応があるかどうかを問います。

声を出して挨拶をするというわけではなく、失語など声が出せない場合には言語以外の表現でも挨拶やに一つの表現ができれば良いとされています。

食事
  • 2点.自分で進んで食べようとする
  • 1点.促されると食べようとする
  • 0点.食事に関心がない、全く食べようとしない判定上の注意 器質的消化器疾患を除外。麻痺で食事の介護が必要な場合、介助により摂取意欲があれば2点(口まで運んでやった場合も積極的に食べようとすれば2点)
食事を進んで食べることができるかということを問います。

食欲の面を評価するため、消化器疾患などで食べれない場合や、食事に介助が必要な状態になどでも食事を摂取する意欲があり積極的に食べようとすれば2点と評価します。

排せつ
  • 2点.いつも自ら便意尿意を伝える、あるいは自分で排便、排尿を行う
  • 1点.時々尿意、便意を伝える
  • 0点.排泄に全く関心がない判定上の注意 失禁の有無は問わない。尿意不明の場合、失禁後にいつも不快を伝えれば2点
自分で排便排尿を行うことができるかを問います。

排泄への意欲の面を評価するため、失禁の有無は問われません。

失禁をしてしまう場合でも不快だということを伝えられれば2点と採点します。

リハビリ、活動
  • 2点.自らリハビリに向かう、活動を求める
  • 1点.促されて向かう
  • 0点.拒否、無関心判定上の注意 リハビリでなくとも散歩やレクリエーション、テレビでもいい。寝たきりの場合、受動的理学運動に対する反応で判定する。
自分から活動を求めるかどうかを問います。

自分から散歩やレクリエーション、テレビなど何かの活動を自発的に求めているかを評価します。

活動に対して拒否的であったり無関心な状態の場合は0点となります。

低栄養のリスクレベル

低栄養状態のリスクを、複数の指標を用いて評価します。

評価結果は、低リスク・中リスク・高リスクの3段階です。

リスク分類 低リスク 中リスク 高リスク
BMI 18.5~29.9 18.5未満
体重減少率 変化なし

(減少3%未満)

1か月に3~5%未満

3か月に3~7.5%未満

6か月に3~10%未満

1か月に5%以上

3か月に7.5%以上

6か月に10%以上

血清アルブミン値 3.6 g/dl 以上 3.0~3.5 g/dl 3.0 g/dl 未満
食事摂取量 76~100% 75%以下
栄養補給法 経腸栄養法

静脈栄養法

褥瘡 褥瘡

参照 18【栄養マネジメント加算様式_FIX】平成17年9月7日老老発第0907002号

 嚥下調整食の食形態

日摂食嚥下リハ会誌 17(3):255‒267, 2013 に基づき嚥下調整食の食形態を評価します。

名称 形態 目的・特色 主食の例 必要な咀嚼能力 他の分類との対応
嚥下訓練食品0j 均質で,付着性・凝集性・かたさに配慮したゼリー

離水が少なく、スライス状にすくうことが可能なもの

重度の症例に対する評価・訓練用少量をすくってそのまま丸呑み可能

残留した場合にも吸引が容易

たんぱく質含有量が少ない

(若干の送り込み能力) 嚥下食ピラミッドL0

えん下困難者用食品許可基準Ⅰ

嚥下訓練食品0t 均質で,付着性・凝集性・かたさに配慮したとろみ水(原則的には,中間のとろみあるいは濃いとろみのどちらかが適している) 重度の症例に対する評価・訓練用少量ずつ飲むことを想定

ゼリー丸呑みで誤嚥したりゼリーが口中で溶けてしまう場合

たんぱく質含有量が少ない

(若干の送り込み能力) 嚥下食ピラミッドL3の一部

(とろみ水)

嚥下調整食1j 均質で,付着性,凝集性,かたさ,離水に配慮したゼリー・プリン・ムース状のもの 口腔外で既に適切な食塊状となっている(少量をすくってそのまま丸呑み可能)

送り込む際に多少意識して口蓋に舌を押しつける必要がある

0jに比し表面のざらつきあり

おもゆゼリー,ミキサー粥のゼリー など (若干の食塊保持と送り込み能力) 嚥下食ピラミッドL1・L2

えん下困難者用食品許可基準Ⅱ

UDF区分4(ゼリー状)

(UDF:ユニバーサルデザインフード)

嚥下調整食2-1 ピューレ・ペースト・ミキサー食など,均質でなめらかで,べたつかず,まとまりやすいもの

スプーンですくって食べることが可能なもの

口腔内の簡単な操作で食塊状となるもの(咽頭では残留,誤嚥をしにくいように配慮したもの) 粒がなく,付着性の低いペースト状のおもゆや粥 (下顎と舌の運動による食塊形成能力および食塊保持能力) 嚥下食ピラミッドL3

えん下困難者用食品許可基準Ⅱ・Ⅲ

UDF区分4

嚥下調整食2-2 ピューレ・ペースト・ミキサー食などで,べたつかず,まとまりやすいもので不均質なものも含む

スプーンですくって食べることが可能なもの

やや不均質(粒がある)でもやわらかく,離水もなく付着性も低い粥類 (下顎と舌の運動による食塊形成能力および食塊保持能力) 嚥下食ピラミッドL3

えん下困難者用食品許可基準Ⅱ・Ⅲ

UDF区分4

嚥下調整食3 形はあるが,押しつぶしが容易,食塊形成や移送が容易, 咽頭でばらけず嚥下しやすいように配慮されたもの

多量の離水がない

舌と口蓋間で押しつぶしが可能なもの

押しつぶしや送り込みの口腔操作を要し(あるいそれらの機能を賦活し),かつ誤嚥のリスク軽減に配慮がなされているもの

離水に配慮した粥など 舌と口蓋間の押しつぶし能力以上 嚥下食ピラミッドL4

高齢者ソフト食

UDF区分3

嚥下調整食4 かたさ・ばらけやすさ・貼りつきやすさなどのないもの

箸やスプーンで切れるやわらかさ

誤嚥と窒息のリスクを配慮して素材と調理方法を選んだもの

歯がなくても対応可能だが,上下の歯槽提間で押しつぶすあるいはすりつぶすことが必要で舌と口蓋間で押しつぶすことは困難

軟飯・全粥など 上下の歯槽提間の押しつぶし能力以上 嚥下食ピラミッドL4

高齢者ソフト食

UDF区分2およびUDF区分1の一部

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