エビデンス全般 ビッグデータ

MDVとJMDC:レセプトデータベース研究実施時の注意点

はい まずリアルワールドデータっていうのは

この文脈ですと主に日々の診療で出てくる レセプト情報 診療報酬の請求情報ですね

こういうのを指します

臨床試験っていうちょっと特別な環境じゃなくて 実際の社会で医療がどう行われているか

それを知るためのデータということになります

日本だと今ご存知のように高齢化が進んでいたり

あとは新薬開発のコストがすごく上がっていたり

規制が変わったりそういう背景があって

このRWD活用への期待が非常に高まってるんですね

なるほど ではまず最初のMDVから見ていきましょうか

こちらは主にDPC対象病院 つまり比較的規模の大きい旧正規の病院のデータを集めたもの というそういう理解で良いですかね

その通りです 特徴としてはやっぱりその規模感ですか

3800万人以上って日本の人口の約3割近く

これはちょっと驚きですね

まさにその規模があるおかげで特定の重い病気が全体としてどう扱われているか

その大きな流れを見るのには非常に役立ちます

それに加えて論文にもありましたけど

一部の病院さんでは検査地のデータも入っていますし

あとはDPCコード

これで入院の主たる目的になった病気とか大まかな治療内容

それから医療費まである程度読み取れるんですね

なので重症なケースの分析とか

あるいは医療経済的な分析には特に強力なデータと言えます

なるほど 3800万人分のデータで病気の大きな地図を描けると

ただどんな地図にも描かれていない場所があるみたいに限界もあるということですよね

そうなんです

論文が指摘している主な限界点としては まず患者さんがDPC病院以外のところにかかった場合

その後の情報がちょっと追えなくなってしまうこと それから外来での状況ですね

例えば残念ながら亡くなられた場合とか 病気の重さ あとは処方された薬の細かい量とか

そういう情報がちょっと抜け落ちている点

あとこれも重要なんですけど イベントの発生が年月単位でしか記録されない

つまり5月に治療方針が変わったっていうのはわかっても

それが5月の1日なのか31日なのかまでは区別がつかないんですね

だから数日単位の細かい変化を見たい研究だとデータの解像度が少し足りない可能性がある

それと検査値も一度の施設限定なので

日本全体にそのまま当てはめられるかというとそこは慎重な判断が必要になりますね

なるほど 大きな流れはつかめるけれども

細かい部分ディテールは少しぼやけてしまうかもしれないと

実際に研究で使うとなるとその特性をちゃんと理解した上で工夫しないといけない感じですね

ではもう一方のJMDC こちらはどうでしょう

企業の健康保険組合がベースということですが MDVとはどういう違いがあるんでしょうか

JMDCの方は企業の従業員の方とそのご家族 約1300万人以上のデータが中心になっています

MDVほどの規模ではないんですがユニークな点としては健康診断のデータが含まれていることですね

そして最大の強みと言えるのが

患者さんが例えば違う病院とかクリニックにかかったとしても同じ健康保険組合にずっと加入していれば

長期間に渡って情報を追いかけられる可能性があるということです

これはMDVにはないかなり大きな利点と言っていいと思います

へーそれはすごい

違う医療機関に行っても追跡できる可能性があるんですか

それは足しない患者さんの長い経過を見たいときなんかすごく魅力的ですね

そうなんですよ

ただまあこちらも良い点ばかりではなくてですね

JMDCは主に現役世代とそのご家族のデータが中心なので

どうしても高齢者の方のデータが相対的に少なくなってしまう

日本の人口構成を考えるとここは一つ注意点ですね

なるほどそれからMDVと同じようにイベントの発生は年月単位ですし

あと処方と診断がデータ上で直接は紐づいていない

つまりこの薬が本当にこの診断名に対して出されたのかという確証がデータだけでは得にくい場合があると

さらに病院の外で亡くなられたケースの多くはデータ上では副職できていないという

これはRWDに共通する課題ですけど そういう点も抱えていますね

なるほどJMDCは長期追跡には強いけど高齢者層が少し手薄で

MDVと同じようなデータの精度の限界みたいなものもあると

でも現役世代が中心というのは日本の高齢化社会全体を見ようとすると逆に大きな偏りになったりしませんか

そこはどうなんでしょう

それは非常に重要なご指摘です

まさにどっちのデータベースを選ぶかっていうのはあなたが何を明らかにしたいか

その研究目的に完全に依存するんですね

論文で紹介されていた抗止血症治療薬の研究例がすごくわかりやすかったです

MDVとJMDCで処方される薬の種類自体は似ていたとしても患者さんの年齢層とか持病の有無とかそういう背景因子

これが結構違うMDVの方が高齢で合併症を持っている方が多い傾向にあると

なのでその違いが結果の解釈に影響を与える可能性であるということが示唆されていました

これはデータベースの個性みたいなものを理解せずに表面的な結果だけを見てしまうと

ちょっと違う結論を導いちゃうかもしれないといういい例ですよね

データベースの個性ですか面白い言い方ですね

確かにその性格を知らないとうまく付き合えないかもしれないですね

それに加えて論文では日本の医療システム自体の特性

例えば紹介状がなくても専門医にかかりやすいいわゆるフリーアクセスですね

これが患者さんの受診行動をちょっと複雑にしていて

データだけでその全体像を捉えるのが難しい場合があるという点も指摘しています

他にも例えば治療を始めた時点を特定するためにはある程度の過程が必要になったり

あとは重症度みたいな臨床情報が不足していたり

月単位のデータだと精密な時系列分析が難しかったり

実践的な課題っていうのは少なくないわけです

だからこそ日本のデータの特性に詳しい専門家とうまく連携していくことが推奨されているんですね

なるほどよくわかりました

まとめるとMDVとJMDCどちらも日本のリアルワールドを知るためのすごく強力なツールなんだけれども

それぞれ得意なこと

例えばMDVなら重症例とかコスト分析

JMDCなら長期追跡とか現役世代があって

同時に共通のあるいは固有の苦手なこと

データの精度とか追跡の限界特定の情報が足りないとかそういうのがある

だから結局はあなたが調査したい内容と日本の医療とかデータの特性を

ちゃんと理解した上で 使い分けることが何より重要だということですね

まさにおっしゃる通りです

一般的なRWDの限界に加えて日本固有の課題

例えばイベントが起こった時期の正確さとか施設をまたいだ追跡の難しさ

こういった点には特に注意が必要ですね

論文では将来的には臨床試験を補完したり

あるいはゲノム情報みたいな新しいデータソースとつながったりする可能性にも期待を寄せています

ただ同時に新難名の正確性をどうやって検証していくかとか

データの信頼性をさらに高めていく努力も今後の課題として挙げていますね

ありがとうございます非常にクリアになりました

さて最後にこれを聞いているあなたに一つ考えていただきたい問いを投げかけたいと思います

論文によるとこれらのデータベースは仮説を生み出すのには非常に役立つと

でも現時点では原因と結果をはっきり示すような研究はまだ少ないということなんですね

これからリアルワールドデータの活用がますます進んでいく中で

単なる観察を超えてその知見を実際の医療の意思滅底に自信を持って活用していくために

日本ではこれからどんなハードルを乗り越えていく必要があるとあなたは考えますか?

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