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アンケート調査って研究になるの?”臨床研究”としてのアンケート

こんにちは。E-Taroです。今回のテーマは「アンケート調査って研究になるの?”臨床研究”としてのアンケート」です。

アンケート調査は世に溢れています。マーケティング目的で市場調査アンケートが送られてくる方もいらっしゃるのではないでしょうか。このアンケートという手法は、市場調査だけでなくヘルスケア領域における調査にも使われることがあります。

実際の例

例えば、次のいくつかの項目に対して、近いものを一つ選んでみてください。

  1. 寝つき
    1. 問題ない(または、寝付くのに30分以上かかったことは一度もない)。
    2. 寝つくのに30分以上かかったこともあるが、一週間の半分以下である。
    3. 寝つくのに30分以上かかったことが、週の半分以上ある。
    4. 寝つくのに60分以上かかったことが、(1週間の)半分以上ある。
  2. 体重減少(最近2週間で)
    1. 体重は変わっていない、または、体重は増えた。
    2. 少し体重が減った気がする。
    3. 1キロ以上やせた。
    4. 2キロ以上やせた。
  3. 集中力/決断
    1. 集中力や決断力は普段と変わりない。
    2. ときどき決断しづらくなっているように感じたり、注意が散漫になるように感じる。
    3. ほとんどの時間、注意を集中したり、決断を下すのに苦労する。
    4. ものを読むこともじゅうぶんにできなかったり、小さなことですら決断できないほど集中力が落ちている。

これらの質問は、「うつ度チェック 簡易抑うつ症状尺度(QIDS-J)」から抜粋したものです。実際には16項目の質問からなるもので、回答の選択肢によって点数が加算され、合計点をもとに簡易的に「うつ度」を調べることが出来るアンケート調査になっています。

完全版を体験したい方は、ぜひこちらのリンクもご覧ください。

うつ度チェック 簡易抑うつ症状尺度(QIDS-J)

QIDS-Jを用いた論文もいくつか発表されていますが、現時点でまだまだ数は限られているので、研究するなら今がチャンスかもしれません。

Clin Neuropharmacol. Jan/Feb 2018;41(1):1-5.

doi: 10.1097/WNF.0000000000000257.

The Association Between the Severity and Level of Understanding of Depression Among Patients Treated With Antidepressants: A Survey of 424 Outpatients in Japan

診断やスクリーング目的ではなく、研究目的でアンケート調査を行うのであれば、QIDS-Jのような指標に加えて、参加者の背景情報や、関連を調べたい情報を同時に集める必要があります。そうでないと、参加した人がうつ症状を有しているかどうかがわかるだけですから。

まず必要なもの

では、アンケートを研究として実施するために何がまず必要か。それが「仮説」です。今までどんな研究が実施されており、何が分かっていて、何が分からないままなのか。だいたいパッと思いつくことは既に誰かが何らかの形で調べていることがほとんどだと思った方がいいので、教科書や論文をしらみつぶしに読み漁る時間がある程度必要でしょう。

当然ながら、それなりにモチベーション維持との戦いになるので、「アンケートでサクッとデータ集めて研究したい!」くらいの意思だとなかなか形にするのは難しいでしょう。

今のご時世なら、例えば、「コロナの影響で、●●業界で働く人たちは、特に精神的に負荷がかかっていて、うつ症状が出ている人の割合が多いのではないか?」のような疑問が沸いたとします。これが、臨床で生じる疑問(クリニカルクエスチョン)と呼ばれるものです。

それをもう少しブラッシュアップして、次のような内容に落とし込んでみましょう(もちろん、もっと深く細かく設定することもできるでしょう)。

「コロナの影響で、●●業界で働く人たちは、●●業界以外の社会人に比べて、QIDS-Jのスコアが6以上の人の割合が多いのではないか?」

調べたい内容を研究の形に落とし込んで「回答できる問い」したものをリサーチクエスチョンと呼びます。

ここに、研究対象に当てはまるかどうかを決める篩(ふるい)を設けます。

例えば

  • 日本に住んでいる
  • アンケート調査時点で20歳以上60歳未満
  • アンケート調査時点で何らかの職についている

などです。

その他の重要な視点

インターネットを介したウェブ調査の場合、そこに「インターネットを使える環境にある」「インターネット利用のためのデバイスを持っており、充電等も出来る」という見えない条件も入ってきます。

そもそも「アンケートに答える能力や気力がある」という前提条件も必要ですね。

ざっと考えるだけでこんなにも頭を使わなければなりません。アンケート調査のタイミングや、募集期間、募集媒体も重要です。

インフォームドコンセント

また、研究利用するためには、「インフォームドコンセント」が必須です。研究の目的や、集めたデータを何に使ってどう保管するのか(いつデータを破棄するのか)、結果をどう使うのか、アンケート調査にどの程度の負荷がかかるのか(謝礼があるなら、どの程度の謝礼を受け取れるのか)といった内容を予め伝えて同意した人だけがアンケート調査参加するような仕組みを整えなければなりません。

詳細は下記の厚生労働省のウェブサイトもチェックしてみてください。なかなかのボリュームです。

まとめ

シンプルなアンケート調査でも、その準備や計画には相当の労力がかかります。「研究」としてアンケート調査が実施されているのを見た時や、あるいはそうした調査に参加する時には、その背景にある綿密な準備に思いを馳せると味わい深いかもしれませんね。

 

それでは、また。

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