エビデンス全般 臨床試験 規制

ICH E6 (GCP)

Table of Contents

序文

医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)は、人を対象とする治験の計画、実施、記録及び報告に関し、その倫理的、科学的な質を確保するための国際的な基準である。本基準を遵守することによって、被験者の権利、安全及び福祉がヘルシンキ宣言に基づく原則に沿った形で保護されること、また臨床試験(治験)データが信頼できることが公に保証される。
本ICH-GCPガイドラインは、3極間での治験データの相互受入れを促進するため日本、欧州連合(EU)及び米国に統一基準を提供することを目的としている。
本ガイドラインは、日本、欧州連合(EU)及び米国に加えて、オーストラリア、カナダ、スカンジナビア諸国及び世界保健機関(WHO)の現行GCPを考慮に入れて作成したものである。
本ガイドラインは、規制当局に提出する治験データを作成する際に従うべきものである。
本ガイドラインに規定されている原則は、被験者の安全及び福祉に影響を及ぼしうる他の臨床研究にも適用され得るものである。

1.用語の定義GLOSSARY

1.1副作用Adverse Drug Reaction (ADR)
承認前の新医薬品又は新用途での臨床経験(従って臨床用量が定まっていない場合) については以下の通り:
投与量にかかわらず、投与された医薬品(治験薬)に対するあらゆる有害で意図しない反応を副作用と考えるべきである。「医薬品(治験薬)に対する反応」との語句は、当該医薬品と有害事象の関係について、少なくとも合理的に可能性があり得ると考えられ、因果関係が否定できない反応を意味する。
市販後の医薬品については以下の通り:
疾病の予防、診断、治療、又は生理機能の調整のために用いられる通常の投与量範囲で投与された医薬品(治験薬を含む)に対する有害で意図しない反応。
(ICHガイドライン「治験中に得られる安全性情報の取り扱いについて」を参照)

1.2 有害事象Adverse Event (AE)
医薬品(治験薬を含む)を投与された患者又は被験者に生じたあらゆる好ましくない医療上のできごと。必ずしも当該医薬品の投与との因果関係が明らかなもののみを示すものではない。つまり、有害事象とは、医薬品(治験薬を含む)が投与された際に起こる、あらゆる好ましくない或いは意図しない徴候(臨床検査値の異常を含む)、症状又は病気のことであり、当該医薬品との因果関係の有無は問わない。
(ICHガイドライン「治験中に得られる安全性情報の取り扱いについて」を参照)

1.3 改訂(治験実施計画書の)Amendment (to the protocol)
『治験実施計画書の改訂』を参照。

1.4 適用される規制要件Applicable Regulatory Requirement(s)
治験の実施に係わる全ての法規を含む規制。

1.5 承認(治験審査委員会の) Approval (in relation to Institutional Review Boards)
治験が、治験審査委員会及び治験実施医療機関の定める規則並びにGCP及び適用される規制要件に従って審査され、治験が当該医療機関で実施されることを治験審査委員会が了承する旨を決定すること。

1.6 監査Audit
評価の対象となった治験に係わる業務の実施、データの記録、解析、その正確な報告が、治験実施計画書、治験依頼者の標準業務手順書、GCP及び適用される規制要件に従って行われたか否かを確定するため治験に係わる業務及び文書を体系的かつ独立に検証すること。

1.7 監査証明書Audit Certificate
監査が行われたことを確認する監査担当者による証明書。

1.8 監査報告書Audit Report
治験依頼者の監査担当者による監査の結果の評価を記述したもの。

1.9 監査証跡Audit Trail
事実経過の再現を可能とする文書。

1.10 盲検化/遮蔽化 Blinding/Masking
治験に参加する単数又は複数の当事者が、治療方法の割付けについて知らされないようにする措置をいう。単盲検法は通常、被験者が割付けの内容を知らされないこと、二重盲検法は被験者、治験責任医師、モニター、及び一部の事例ではデータ解析者が割付けの内容を知らされないことを意味する。

1.11 症例報告書Case Report Form (CRF)
各被験者に関して、治験依頼者に報告することが治験実施計画書において規定されている全ての情報を記録するための、印刷された又は光学的若しくは電子的な記録様式(記録されたものを含む)。

1.12 臨床試験(治験)Clinical Trial/Study
人を対象とする研究で、①治験薬の臨床的、薬理学的及び(又は)その他の薬力学的効果の検出又は確認、②治験薬の副作用の確認、③治験薬の安全性及び(又は)有効性を確認するための治験薬の吸収、分布、代謝及び排泄の検討等を目的とするもの。

1.13 治験の総括報告書Clinical Trial/Study Report
治療薬、予防薬又は診断薬の治験について記述した文書で、臨床的・統計学的な記述、説明及び解析を一つの報告書に網羅してまとめたもの。(ICHガイドライン「治験の総括報告書の構成と内容に関するガイドライン」を参照)

1.14 対照薬Comparator (Product)
治験において比較の対照として用いられる治験薬、市販薬(すなわち実対照薬又はプラセボ)。

1.15 遵守 (治験に関する)Compliance (in relation to trials)
GCP及び適用される規制要件等、治験に係わる全ての要件を守ること。

1.16 秘密の保全Confidentiality
治験依頼者に帰属する情報及び被験者の身元に関する情報を、認められた者以外には開示しないこと。

1.17 契約書Contract
業務及び義務の委任と分担並びに、適切な場合には、金銭的事項についての取決めを記述した当事者間の合意文書で、日付を記入し署名されたもの。治験実施計画書は契約書の基礎としての役割を果たし得る。

1.18 治験調整委員会Coordinating Committee
多施設共同治験の実施を調整するために、治験依頼者が設置することのできる委員会。

1.19 治験調整医師Coordinating Investigator
多施設共同治験において、参加各治験実施医療機関の治験責任医師を調整する責任を担う医師。

1.20 開発業務受託機関Contract Research Organization (CRO)
治験依頼者の治験に係わる業務の一部又はそれ以上の遂行を治験依頼者から受託した個人又は(商業的、学術的、その他の)組織。

1.21 直接閲覧Direct Access
治験の評価に重要な記録や報告を検証、分析、確認し、複写することを許諾すること。直接閲覧を行ういかなる者(例えば国内外の規制当局並びに治験依頼者のモニター及び監査担当者)は、被験者の身元及び治験依頼者に帰属する情報に関する秘密の保全を図るため、適用される規制要件に従って、あらゆる妥当な予防措置を講ずる。

1.22 証拠資料Documentation
治験の方法、実施及び(又は)結果並びに治験の結果に影響を及ぼした要因及び講じられた措置等に関して記述又は記録したあらゆる方式の全ての記録類。(筆記された記録、電子的・磁気的・光学的記録、走査図、X線写真及び心電図等が含まれるが、これらに限らない)。

1.23 必須文書Essential Documents
治験の実施と得られたデータの質を個々にかつまとめて評価することを可能にする文書等の記録(第8章参照)。

1.24 医薬品の臨床試験の実施に関する基準Good Clinical Practice (GCP)
治験の計画、実施、モニタリング、監査、記録、解析及び報告に関する基準で、データ及び報告された結果の信頼性及び正確性並びに被験者の人権、人格の統合性及び秘密の保護についての保証を与えるもの。

1.25 独立データモニタリング委員会(IDMC)Independednt Data-Monitoring
Committee(IDMC)(効果・安全性モニタリング委員会、モニタリング委員会、データモニタリング委員会)
治験の進行、安全性データ及び重要な有効性エンドポイントを適当な間隔で評価し、治験依頼者に治験の継続、変更、又は中止を提言することを目的として、治験依頼者が設置することができる独立したデータモニタリング委員会。

1.26 公正な立会人Impartial Witness
治験の実施から独立し、治験関係者から不当に影響を受けない人であって、被験者又はその法定代理人等が同意文書及びその他の被験者への説明文書を読むことができない場合にインフォームド・コンセントの過程に立ち会い、同意文書及び説明文書を読む者。

1.27 独立倫理委員会 Independent Ethics Commitee(IEC)
医学・科学の専門家及び医学・科学の非専門家によって構成される独立の(医療機関内、地域的、国単位又は複数国にまたがる)委員会。当委員会の責務は被験者の人権、安全及び福祉の保護を保証することであり、特に治験実施計画書、治験責任医師の適格性、施設、並びに被験者から文書によるインフォームド・コンセントを得るのに使用される方法及び 資料を審査し、承認することによって、かかる保護に公の保証を与えることである。
独立倫理委員会の法的地位、構成、機能、運営及び規制上の要件は、国によって異なる場合もあるが、独立倫理委員会が本ガイドラインに規定するGCPに従って活動できることを保証するものでなければならない。

1.28 インフォームド・コンセントInformed Consent
被験者の参加の意志決定に必要な、治験に関するあらゆる角度からの説明がなされた後に、当該治験に自発的に参加する旨を被験者が自由意志によって確認する過程。インフォームド・コンセントは、署名と日付が記入された同意文書をもって証明される。

1.29 査察Inspection
治験実施施設、治験依頼者及び開発業務受託機関(CRO)の施設又はその他の規制当局が適切とみなした施設に存在し、当局が治験に関係すると判断した文書、設備、記録及びその他の資料等について、規制当局が行う公式の検証。

1.30 治験実施医療機関Institution (medical)
治験が実施される、公的又は私的な医学又は歯学関係の施設。

1.31 治験審査委員会 Institutional Review Board(IRB)
医学・科学の専門家及び非専門家によって構成される独立の委員会。当委員会の責務は、特に、治験実施計画書、並びに被験者から文書によるインフォームド・コンセントを得るのに使用される方法及び資料を審査し、承認し、また継続審査を行うことによって、被験者の人権、安全及び福祉の保護を保証することである。

1.32 治験の中間報告書Interim Clinical Trial/Study Report
治験の進行中に行われる解析に基づく中間的な治験成績とその評価に関する報告書。

1.33 治験薬Investigational Product
治験において被験薬又は対照薬として用いられる有効成分を含む製剤又はプラセボ。既承認医薬品であっても、承認されていない(製剤組成上又は包装上の)方法で使用し又は組み合わせる場合、承認されていない適応症に用いる場合或いは承認された用途についてさらに情報を収集する目的で用いる場合には、既承認医薬品も治験薬に含まれる。

1.34 治験責任医師Investigator
治験実施施設において治験の実施に関して責任を有する医師又は歯科医師。治験実施施設において、治験が複数の者から成るチームにより実施される場合には、治験責任医師は当該チームの責任者たるリーダーであり、首席治験医師 (principal investi-gator)と呼ばれることがある。『治験補助医師 (Subinvestigator)』を参照。

1.35 治験責任医師/治験実施医療機関Investigator/Institution
この用語は、「適用される規制要件により要求されている場合には治験責任医師及び(又は)治験実施医療機関」を意味する。

1.36 (治験責任医師用)治験薬概要書Investigator's Brochure
治験の実施に必要な、治験薬についての臨床及び非臨床データを編集したもの(第7章参照)。

1.37 法定代理人等Legally Acceptable Representative
治験への参加について、被験者になると見込まれる者に代わって同意する権限が、適用される法律によって与えられている個人又は団体。

1.38 モニタリングMonitoring
治験の進行状況を調査し、治験が治験実施計画書、標準業務手順書(SOP)、GCP及び適用される規制要件に従って実施、記録及び報告されていることを保証する行為。

1.39 モニタリング報告書Monitoring Report
モニターが、治験依頼者の標準業務手順書に従って、治験実施施設を訪問した毎に、及び(又は)治験に係わるあらゆる交信の後に作成し、治験依頼者に提出する報告書。

1.40 多施設共同治験Multicenter Trial
単一の治験実施計画書に従い、複数の施設で、従って複数の治験責任医師によって実施される治験。

1.41 非臨床試験Nonclinical Study
人を対象としない生物医学的試験研究。

1.42 意見(独立倫理委員会の) Opinion(in relation to Independent Ethics Commitee)
独立倫理委員会(IEC)が下す判断及び(又は)勧告。

1.43 原医療記録Original Medical Record
『原資料 (Source Documents)』を参照。

1.44 治験実施計画書Protocol
治験の目的、デザイン、方法、統計学的な考察及び組織について記述した文書。治験実施計画書には通常、治験の背景及び根拠が記述されるが、これは、治験実施計画書に引用されている他の文書に記述することもできる。本ガイドラインでは、「治験実施計画書」は「治験実施計画書」及び「治験実施計画書の改訂」を意味する。

1.45 治験実施計画書の改訂Protocol Amendment
治験実施計画書に加えられた変更で、文書化又は公式に明示されたもの。

1.46 治験の品質保証Quality Assurance (QA)
治験の実施、データ作成、文書化(記録化)及び報告が、GCP及び適用される規制要件を遵守していることを保証するために設定された、計画的かつ体系的な全活動。

1.47 治験の品質管理Quality Control (QC)
治験関連の活動の質に求められる要件を充足していることを検証するために、治験の品質保証システム(Quality Assurance System)の一環として行われる実務的な手法及び活動。

1.48 無作為化Randomization
バイアスを軽減するために、被験者を無作為に処置群又は対照群に割り付ける方法。

1.49 規制当局 Regulatory Authorities
規制を行う権限を有する機関。本ガイドラインでは、「規制当局」は、提出された治験データを審査する当局及び査察を実施する当局を含む(1.29参照)。またこれらの機関は「管轄当局(competent authorities)」として記される場合もある。

1.50重篤な有害事象又は重篤な副作用Serious Adverse Event (SAE) or Serious Adverse Drug Reaction(Serious ADR)
投与量にかかわらず、医薬品(治験薬を含む)が投与された際に生じたあらゆる好ましくない医療上のできごとのうち、以下のものを言う。
──死亡に至るもの
──生命を脅かすもの
──治療のため入院又は入院加療期間の延長が必要なもの
──永続的又は重大な障害/機能不能に陥るもの
──先天異常を来すもの
(ICHガイドライン「治験中に得られる安全性情報の取り扱いについて」を参照)

1.51 原データSource Data
治験における臨床所見、観察、その他の活動に関する元の記録又はその保証付き複写 に記録されているあらゆる情報で、治験の再現と評価に必要なもの。
原データは原資料(元の記録又はその保証付き複写)の中に含まれる。

1.52 原資料Source Documents
元の文書、データ及び記録(例えば、病院記録、診療チャート、検査ノート、メモ、被験者の日記又は評価用チェックリスト、投薬記録、自動計器の記録データ、正確な複写であることが検証によって保証された複写物又は転写物、マイクロフィッシュ、写真のネガ、マイクロフィルム又は磁気媒体、エックス線写真、被験者ファイル及び治験に関与する薬局、検査室、医療技術部門に保存されている記録等)。

1.53 治験依頼者Sponsor
治験の発案、運営及び(又は)資金に責任を負う個人、会社、研究機関又は団体。

1.54 治験依頼者兼治験責任医師Sponsor-Investigator
単独又は他者と共同で治験を発案、実施する医師又は歯科医師で、その直接の指示のもとに治験薬が被験者に投与、処方又は使用される場合を言う。この用語は個人以外(例えば,法人又は機関)を含まない。治験依頼者兼治験責任医師の義務には、治験依頼者としての義務と治験責任医師としての義務の双方が含まれる。

1.55 標準業務手順書Standard Operating Procedures (SOPs)
特定の業務を均質に遂行するための、詳細に記述された指示書。

1.56 治験補助医師Subinvestigator
治験実施チームの個々のメンバーで、治験責任医師によって指名・監督され、治験実施施設で、治験に係わる重要な業務及び(又は)重要な決定を行う者(例えば助手、研修医等)。『治験責任医師(Investigator)』を参照。

1.57 被験者Subject/Trial Subject
治験に参加し、治験薬の投与を受けるか又はその対照となる個人。

1.58 被験者識別コードSubject Identification Code
個々の被験者の身元に関する秘密を保護するため、治験責任医師が各被験者に割り付けた固有の識別符号で、治験責任医師が有害事象及び(又は)その他の治験関連データを報告する際に、被験者の氏名の代わりに用いられるもの。

1.59 治験実施施設Trial Site
治験に係わる業務が実際に行われる場所。

1.60 予測できない副作用Unexpected Adverse Drug Reaction
副作用のうち、適用可能な治験薬に関する情報(例えば、未承認の治験薬では治験薬概要書、既承認医薬品では添付文書や特性を記した説明書)と、その性質や重症度が一致しないもの。
(ICHガイドライン「治験中に得られる安全性情報の取り扱いについて」を参照)

1.61 社会的に弱い立場にある者Vulnerable Subjects
参加に伴う利益或いは参加拒否による上位者の報復を予想することにより、治験への自発的参加の意志が不当に影響を受ける可能性のある個人。例としては、階層構造を有するグループの構成員───医学生、薬学生、歯学生、看護学生、下位の病院及び検査機関の職員、製薬企業従業員、軍隊の隊員並びに被拘留者等がある。
その他の社会的に弱い立場にある者としては、不治の病に罹患している患者、養護施設収容者、失業者又は貧困者、緊急状態にある患者、少数民族集団、ホームレス、放浪者、難民、未成年並びに治験参加への同意を表明する能力のない者があげられる。

1.62 福祉(被験者の)Well-being (of the trial subjects)
治験に参加する被験者の肉体的及び精神的な健全性。

2.ICH GCP の原則

2.1治験は、ヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則、GCP及び適用される規制要件を遵守して行われなければならない。

2.2治験を開始する前に、個々の被験者及び社会にとって期待される利益と予期される危険及び不便とを比較考量するものとする。期待される利益によって危険を冒すことが正当化される場合に限り、治験を開始し継続すべきである。

2.3被験者の人権、安全及び福祉に対する配慮が最も重要であり、科学的、社会的利益よりも優先されるべきである。

2.4治験薬に関して、その治験の実施を支持するのに十分な非臨床及び臨床試験に関する情報が得られていなければならない。

2.5治験は科学的に妥当でなければならず、治験実施計画書にその内容が明確かつ詳細に記載されていなければならない。

2.6治験は、治験審査委員会(IRB)/独立倫理委員会(IEC)が事前に承認した治験実施計画書を遵守して実施しなければならない。

2.7被験者に対する医療及び被験者のためになされた医療上の決定に関する責任は、医師又は歯科医師が常に負うべきである。

2.8治験の実施に関与する者は、その教育、訓練及び経験により、その業務を十分に遂行しうる要件を満たしていなければならない。

2.9全ての被験者から、治験に参加する前に、自由意志によるインフォームド・コンセントを得なければならない。

2.10治験に関する全ての情報は、正確な報告、解釈及び検証が可能なように記録し、取り扱い及び保存しなければならない。

2.11被験者の身元を明らかにする可能性のある記録は、適用される規制要件に従って、被験者のプライバシーと秘密保全に配慮して保護しなければならない。

2.12治験薬の製造、取扱い及び保存は、適用される医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準(GMP)を遵守して行うものとする。治験薬は承認された治験実施計画書を遵守して使用するものとする。

2.13治験のあらゆる局面の質を確保するための手順を示したシステムが、運用されなければならない。

3.治験審査委員会/独立倫理委員会

3.1責務

3.1.1
治験審査委員会/独立倫理委員会(以下、治験審査委員会とする)は全ての被験者の権利、安全及び福祉を保護しなければならない。社会的に弱い立場にある者を被験者とする可能性のある治験には特に注意を払う必要がある。

3.1.2
治験審査委員会は、その責務の遂行のために、以下の資料を入手しなければならない。
治験実施計画書、同意文書(及びその最新版)、被験者募集手順(広告等)、被験者への説明文書、治験薬概要書、安全性に関する情報、被験者への支払及び補償に関する情報、治験責任医師の最新の履歴書及び(又は)その資料を説明するその他の文書、その他治験審査委員会がその責務を全うするために要求する資料。

治験審査委員会は、提案された治験の実施について、適切な期間内に審査を行い、その意見を文書で表明しなければならない。その文書には、審査対象の治験、審査した資料、審査日が明記され、治験審査委員会の意見が次のどれに該当するかが明らかにされていなければならない。
承認する
修正の上で承認する
却下する
すでに承認した事項を取り消す/保留する

3.1.3
治験審査委員会は、治験責任医師が当該治験を実施する上で適格であるか否かを、その最新の履歴書及び(又は)治験審査委員会が要求する他の適切な文書に基づいて検討しなければならない。

3.1.4
治験審査委員会は、進行中の各治験について、被験者に対する危険の程度に応じ、1年に1回以上の頻度で継続的に審査するものとする。

3.1.5
治験審査委員会は、被験者の権利、安全及び福祉を保護する上で、追加の情報が意味のある寄与をすると判断した場合には、4.8.10において規定されている内容以上の情報を被験者に提供するよう要求することができる。

3.1.6
被験者の法定代理人等の同意に基づき、非治療的な治験が行われることが計画されている場合には(4.8.12、4.8.14参照)、治験審査委員会は、提案された治験実施計画書及び(又は)その他の文書が、関連する倫理的問題を適切に配慮しており、かつ適用される規制要件を満たすものであることを確認しなくてはならない。

3.1.7
治験実施計画書において、被験者又はその法定代理人等の事前の同意を得ることが不可能であることが明らかにされている場合には(4.8.15参照)、治験審査委員会は、提案された治験実施計画書及び(又は)その他の文書が、関連する倫理的問題を適切に配慮しており、かつこうした治験(救急的状態における治験など)に対して適用される規制要件を満たすものであることを確認しなくてはならない。

3.1.8
治験審査委員会は、被験者に対する支払額及び支払方法を審査し、これらが被験者に治験への参加を強制したり、不当な影響を及ぼさないことを確認するものとする。被験者への支払は参加期間等によって案分されなければならず、被験者が治験を完遂しなければ支払が全くなされないような方法は不適当である。

3.1.9
治験審査委員会は、支払金額や支払時期を含め、被験者に対する支払に関する情報が同意文書及びその他の被験者への説明文書に記述されていることを確認する。参加期間等による案分の方法が、明記されていなければならない。

3.2構成、業務及び運営

3.2.1
治験審査委員会は、提案された治験について科学的、医学的、倫理的な観点から審議及び評価するのに必要な資格及び経験を、委員会全体として保持できる適切な数の委員で構成するものとする。治験審査委員会は次の要件を満たすことが望ましい。
(a)少なくとも5人の委員から成ること
(b)少なくとも委員の1人は科学以外の分野を専門とすること
(c)少なくとも委員の1人は治験実施医療機関/治験実施施設と無関係であること

当該治験の依頼者及び治験責任医師と無関係な委員のみが、治験に関連する審議事項の採決への参加及び意見の陳述を許されるものとする。

また、委員名簿と各委員の資格に関する記録を保存しなければならない。

3.2.2
治験審査委員会は、業務手順書に従ってその業務を行い、また、その活動及び審議の記録を保存し、かつGCP及び適用される規制要件を遵守しなければならない。

3.2.3
治験審査委員会は、あらかじめ開催が通知され、業務手順書が規定する定足数又はそれを超える委員が出席した会議において、その意思を決定するものとする。

3.2.4
採決に当たっては、治験審査委員会の審議及び討議に参加した委員のみが採決への参加又は意見の表明をすることが許される。

3.2.5
治験責任医師は、その関与する治験について情報を提供することは許されるが、治験審査委員会の討議、又は採決及び意見の陳述に参加できない。

3.2.6
治験審査委員会は、委員以外の特別な分野の専門家の出席を求め、その協力を仰ぐことができる。

3.3手続き

治験審査委員会は、以下の事項を含む手続きを定め、文書化し、これに従わなければならない。

3.3.1
委員会の構成(委員の氏名及び資格)及び委員会の組織上の位置づけを決定すること。

3.3.2
会議の開催日程を決定し、委員へ通知し、会議を運営すること。

3.3.3
治験開始前の審査及び治験開始後の継続審査を実施すること。

3.3.4
継続審査について、適切な頻度を決定すること。

3.3.5
治験審査委員会により既に承認された進行中の治験に関わる軽微な変更に関して、適用される規制要件に従って迅速審査と承認を行うこと。

3.3.6
治験審査委員会が治験を承認する旨の文書を発行する以前に被験者を治験に参加させないよう規定すること。

3.3.7
被験者に対する緊急の危険を回避するために必要な場合、又は変更が事務的事項のみに関するものである場合(例えば、モニターの変更や電話番号の変更など)を除き、治験審査委員会の文書による承認を得る以前に治験実施計画書からの逸脱又は変更を開始しないよう規定すること(4.5.2参照)。

3.3.8
治験責任医師が以下の事項について治験審査委員会に速やかに報告するよう規定すること。
(a)被験者に対する緊急の危険を回避するために行った治験実施計画書からの逸脱又は変更(3.3.7、4.5.2、4.5.4参照)
(b)被験者に対する危険を増大させるか及び(又は)治験の実施に重大な影響を及ぼす治験に関する変更(4.10.2参照)
(c)全ての重篤かつ予測できない副作用
(d)被験者の安全又は当該治験の実施に悪影響を及ぼす可能性のある新たな情報

3.3.9
以下の事項について、治験責任医師/治験実施医療機関に速やかに、かつ確実に文書で通知すること。
(a)治験に関連する委員会の決定
(b)決定の理由
(c)委員会の決定に対する異議申し立て手続き

3.4記録

治験審査委員会は、業務手順書、委員名簿、委員の職業/所属のリスト、提出書類、会議議事録及び書簡等の全ての関連する記録を、治験終了後少なくとも3年間保存し、規制当局の要請に応じて提示できるようにしておかなければならない。
治験審査委員会は、治験責任医師、治験依頼者又は規制当局から、その業務手順書及び委員名簿の提示を求められる場合がある。

4.治験責任医師

4.1治験責任医師の要件

4.1.1
治験責任医師は、教育、訓練及び経験から、治験を適正に実施する責任を負えるだけの能力を有し、また適用される規制要件において求められる全ての資格要件を満たしていなければならない。さらに、最新の履歴書及び(又は)治験依頼者、治験審査委員会及び(又は)規制当局により要求されるその他の適切な文書によってこのことを証明しなければならない。

4.1.2
治験責任医師は、治験実施計画書、最新の治験薬概要書、製品情報及び治験依頼者が提供するその他の情報に記載されている、治験薬の適切な使用法に十分精通していなければならない。

4.1.3
治験責任医師は、GCP及び適用される規制要件を熟知し、これを遵守しなければならない。

4.1.4
治験責任医師/治験実施医療機関は、治験依頼者によるモニタリング及び監査並びに規制当局による査察を受け入れなければならない。

4.1.5
治験責任医師は、治験関連の業務の重要な部分を適切な資格を有する者に分担させた場合には、そのリストを保存するものとする。

4.2資源(リソース)

4.2.1
治験責任医師は、合意された募集期間内に必要数の適格な被験者を集めることが可能であることを(例えば、過去の実績により)証明できなければならない。

4.2.2
治験責任医師は、合意された期間内に治験を適正に実施・終了するに足る時間を有していなければならない。

4.2.3
治験責任医師は、治験を適正かつ安全に実施するため、治験の予定期間中に十分な数の適格なスタッフを確保でき、また適切な設備を利用できなければならない。

4.2.4
治験責任医師は、全ての治験補助者に、治験実施計画書、治験薬及び各人の業務について十分な情報を与えなければならない。
4.3被験者に対する医療

4.3.1
治験責任医師が、治験に関連する医学(又は歯学)的な全ての判断に関する責任を負うものとする。

4.3.2
治験責任医師/治験実施医療機関は、被験者の治験参加期間中及びその後を通じ、治験に関連した臨床上問題となる臨床検査値異常等の全ての有害事象に対して、十分な医療が被験者に提供されることを保証するものとする。治験責任医師/治験実施医療機関は、併発症に対する医療が必要となったことを知った場合には、被験者にその旨を伝えなければならない。

4.3.3
治験責任医師は、被験者に主治医がいる場合には、被験者の同意のもとに、主治医に被験者の治験への参加について知らせることが望ましい。

4.3.4
被験者には治験の途中で参加を取り止める理由を明らかにする義務はないが、治験責任
医師は、被験者の権利を十分に尊重した上で、その理由を確認するための適切な努力を払うべきである。

4.4治験審査委員会への申請等

4.4.1
治験責任医師/治験実施医療機関は、治験開始前に、治験実施計画書、同意文書(及びその最新版)及びその他の被験者への説明文書並びに被験者の募集手順(広告等)について、治験審査委員会から、日付入り承認文書を得なければならない。

4.4.2
治験責任医師/治験実施医療機関は、治験審査委員会に提出する申請書類の一部として、最新の治験薬概要書を提出する。治験中に治験薬概要書の改訂がなされた場合には、治験責任医師/治験実施医療機関は、最新の治験薬概要書を治験審査委員会に提出しなければならない。

4.4.3
治験責任医師/治験実施医療機関は、治験期間を通じ、治験審査委員会の審査の対象となる書類を全て提出するものとする。

4.5治験実施計画書の遵守

4.5.1
治験責任医師/治験実施医療機関は、治験依頼者が同意し、必要な場合には規制当局が同意し、治験審査委員会が承認した治験実施計画書を遵守して治験を実施しなければならない。治験責任医師/治験実施医療機関と治験依頼者は、この合意を確認するために、治験実施計画書又はこれに代わる契約書に署名するものとする。

4.5.2
治験責任医師は、治験実施計画書の改訂に関して、治験依頼者の同意及び治験審査委員会の事前の審査に基づく文書による承認を得ることなく、治験実施計画書からの逸脱又は変更を行ってはならない。ただし、その変更が被験者の緊急の危険を回避するためのものである場合又は治験の事務的事項(モニターの変更、電話番号の変更など)のみに関するものである場合は、この限りではない。

4.5.3
治験責任医師又はその指名した者は、承認された治験実施計画書から逸脱した行為を全て記録し、その理由等を説明しなければならない。

4.5.4
治験責任医師は、被験者の緊急の危険を回避するために、治験審査委員会の事前の承認なしに治験実施計画書からの逸脱又は変更を行うことができる。その際には、逸脱又は変更の内容及び理由並びに治験実施計画書の改訂案(適切な場合)を可能な限り早急に
(a)治験審査委員会に提出し、その承認を得、
(b)治験依頼者に提出し、その同意を得、かつ
(C)要求される場合には規制当局に提出しなければならない。

4.6治験薬

4.6.1
治験実施施設における治験薬の管理責任は、治験責任医師/治験実施医療機関が負うものとする。

4.6.2
許容されるか又は要求される場合は、治験責任医師/治験実施医療機関は、治験実施施設における治験薬の管理責任の一部又は全部を適切な薬剤師又は治験責任医師/治験実施医療機関の監督下にある適当な者に委任することができる。

4.6.3
治験責任医師/治験実施医療機関及び(又は)薬剤師又は治験責任医師/治験実施医療機関が指名した適当な者は、治験薬の治験実施施設への配送、同施設での在庫、被験者毎の使用状況及び未使用治験薬の治験依頼者への返却又はそれに代わる処分に関して、記録を保存するものとする。これらの記録には、日付、数量、ロット/通し番号、使用期限(それが適当な場合)並びに治験薬及び被験者のコード番号を含むものとする。治験責任医師は、治験実施計画書に規定された量の治験薬が被験者に交付され、また治験依頼者から受領した全ての治験薬の数量が正しく管理されたことを証明する記録を保存するものとする。

4.6.4
治験薬は、治験依頼者の定めるところにより(5.13.2及び5.14.3参照)、また適用される規制要件を遵守して保管されねばならない。

4.6.5
治験責任医師は、治験薬が承認された治験実施計画書を遵守した方法でのみ使用されることを保証しなければならない。

4.6.6
治験責任医師又は治験責任医師/治験実施医療機関の指名した者は、治験薬の正しい使用法を各被験者に説明し、当該治験にとって適切な間隔で、各被験者が指示を守っているか否かを確認するものとする。

4.7無作為化の手順及び開封

治験責任医師は、無作為割り付けの手順が規定されている場合にはこれに従い、キーコードが治験実施計画書を遵守した方法でのみ開封されることを保証する。盲検法による治験において予定よりも早い段階での開封(事故による開封、重篤な有害事象のための開封など)を行った時は、治験責任医師はこれを速やかに文書に記録し、その理由を治験依頼者に説明しなければならない。

4.8被験者のインフォームド・コンセント

4.8.1
治験責任医師は、インフォームド・コンセントを取得し、これを文書化する際には、適用される規制要件、GCP及びヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則を遵守するものとする。治験責任医師は、治験の開始前に、同意文書及びその他の被験者への説明文書に関し治験審査委員会の承認を得なければならない。

4.8.2
被験者の同意に関連し得る新たな重要な情報が得られた場合には、同意文書及びその他の被験者への説明文書を改訂し、予め治験審査委員会の承認を得るものとする。治験に継続して参加するか否かについての被験者の意志に影響を与える可能性のある情報が得られた場合には、これに関して、被験者又はその法定代理人等に時宜を得て知らせなければならない。このような情報の伝達については文書に記録するものとする。

4.8.3
治験責任医師又は治験スタッフは、治験への参加又は参加の継続に関し、被験者に強制したり又は不当な影響を及ぼしてはならない。

4.8.4
同意文書を含め、治験に関する口頭及び文書による情報には、被験者又はその法定代理人等に法的権利を放棄させるか又はそれを疑わせる語句、或いは治験責任医師、治験実施医療機関、治験依頼者又はそれらの代理人の過失責任を免除するか又はそれを疑わせる語句を含んではならない。

4.8.5
治験責任医師又はその指名する者は、被験者に対して、又は被験者本人がインフォームド・コンセントを行うことができない場合には法定代理人等に対して、治験審査委員会によって承認された説明文書の内容も含めて、治験のあらゆる角度について十分説明するものとする。

4.8.6
同意文書を含め、治験に関する口頭及び文書による情報は、被験者又はその法定代理人等並びに、適切な場合には公正な立会人が理解可能で、できるだけ非専門的な言語によるものでなければならない。

4.8.7
治験責任医師又はその指名する者は、インフォームド・コンセントを取得する前に、被験者又はその法定代理人等に対して、彼らが治験の詳細について質問する機会と、治験に参加するか否かを決断するのに十分な時間を与えなければならない。治験責任医師又はその指名する者は、被験者又はその法定代理人等が満足するように、治験に関する全ての質問に答えなければならない。

4.8.8
被験者が治験に参加する前に、被験者又はその法定代理人等及びインフォームド・コンセント取得のための説明をした者が同意文書に署名し、各自日付を記入するものとする。

4.8.9
被験者又はその法定代理人等が説明文書を読むことができない場合には、公正な立会人がインフォームド・コンセントの説明の全過程に立ち会わなければならない。被験者又はその法定代理人等に対して、同意文書及びその他の被験者への説明文書の内容が渡され、その内容が読み上げられ、説明され、被験者又はその法定代理人等が被験者の治験への参加に口頭で同意し、さらに被験者(可能な場合)又はその法定代理人等が同意文書に署名し、自ら日付を記入した後に、立会人も署名し、自ら日付の記入を行う。同意文書に署名することにより、立会人は、同意文書及びその他の説明文書中の情報が、被験者又はその法定代理人等に対して正確に説明され、被験者又はその法定代理人等により明らかに理解され、インフォームド・コンセントが被験者又はその法定代理人等の自由意志により与えられたものであることを証明する。

4.8.10
インフォームド・コンセントの説明並びに同意文書及びその他の被験者への説明文書には、以下の事項に関する説明が含まれていなければならない。
(a)当該治験が研究を伴うこと
(b)当該治験の目的
(c)当該治験の処置内容及びそれぞれの処置に無作為に割り付けられる確率
(d)全ての侵襲的操作を含む、定められた治験の手順
(e)被験者の責任
(f)当該治験の実験的な側面
(g)被験者及び適当な場合には胚、胎児及び授乳中の乳児に対して予期される危険又は不便
(h)予期される利益。もしも被験者にとって予期される利益がない場合には、被験者にそれを伝えねばならない。
(i)被験者が受けることのできる他の治療法並びにその治療法に関し予測される重要な利益及び危険
(j)治験に起因する健康被害が生じた場合、被験者が受けることのできる補償及び(又は)治療
(k)被験者が治験参加を完遂できない場合等に、参加期間等を案分して金銭等が支払われる場合は、その案分の取決め
(l)被験者が治験に参加するために費用負担をする必要がある場合は、その予定額
(m)治験への参加は被験者の自由意志によるものであり、被験者は治験への参加を随時拒否又は撤回することができること。また拒否・撤回によって、被験者が不利な扱いを受けたり、本来受けるべき利益を失うことがないこと。
(n)モニター、監査担当者、治験審査委員会及び規制当局には、治験の手順及び(又は)データを検証する目的で被験者の原医療記録を直接閲覧する権利を与えられていること。ただし、被験者の秘密は適用される法規等に定められた範囲内で保全されること。また、同意文書に署名することによって、被験者又はその法定代理人等がこのような直接閲覧を認めたことになること。
(o)被験者の身元を明らかにする記録の秘密は保全され、適用される法規等に定められた範囲内で公にされることはないこと。治験の結果が公表される場合にも、被験者の身元は秘密とされること。
(p)治験へ継続して参加するか否かについての被験者の意志に関連し得る情報が得られた場合には、適切な時期に被験者又はその法定代理人等にそれを知らせること。
(q)被験者が、当該治験及び被験者の権利に関してさらに情報が欲しい場合又は治験に起因する健康被害が生じた場合に、連絡すべき担当者
(r)被験者の治験参加を中止する、予測しうる条件及び(又は)理由
(s)被験者の治験への参加予定期間
(t)治験に参加する被験者の概数

4.8.11
被験者又はその法定代理人等は、治験に参加する前に、署名と日付が記入された同意文書の写し及びその他の被験者への説明文書を受け取るものとする。被験者が治験に参加している間、被験者又はその法定代理人等は、署名され、日付の記入された最新の同意文書の写し及び被験者への説明文書の改訂版を受け取るものとする。

4.8.12
(治療的又は非治療的な)治験が、法定代理人等の同意のみに基づいて治験に組み入れざ るを得ない被験者を対象として実施される場合(例えば未成年者や重度の痴呆患者を対象とする場合)においては、そのような被験者は、その理解の程度に応じて当該治験に関して説明を受け、もし可能であれば本人も同意文書に署名し、自ら日付を記入するものとする。

4.8.13
4.8.14に述べる場合を除いて、非治療的治験(被験者に対する直接の臨床的な利益が予期 されない治験)においては、同意は必ず被験者本人から得なければならず、同意文書には 被験者本人が署名及び日付の記入を行うものとする。

4.8.14
非治療的治験は、次の条件が満たされた場合、法定代理人等の同意によって行うことができる。
(a)治験の目的が、自らインフォームド・コンセントを与えうる被験者による治験では達成されないこと。
(b)被験者に対する予見しうる危険が低いこと。
(c)被験者の福祉に対する悪影響が最小限とされ、また低いこと。
(d)そのような治験が法律により禁止されていないこと。
(e)治験審査委員会に対して、このような被験者の参加を明示した上で承認申請が行われ、かかる被験者の参加について承認文書に記載されていること。

このような治験は、例外が正当化される場合を除き、治験薬の適応となることが意図された疾病又は症状を有する患者において行われるべきである。このような治験における被験者は、特に綿密に観察されるべきである。もしも不当な苦痛を受けていると見受けられる場合には治験を中止すべきである。

4.8.15
救急状況下での治験であって、被験者による事前の同意が不可能な場合においては、被験者の法定代理人等が存在する場合は、その同意を得るべきである。被験者による事前の同意が不可能で、かつ、被験者の法定代理人等が存在しない場合には、被験者の権利、安全及び福祉が保護され、適用される規制要件を遵守して当該治験が実施されることを保証する方法を治験実施計画書及び(又は)その他の文書に記載し、治験審査委員会の承認を受けることが必要である。このような場合でも、被験者又はその法定代理人等に対し、できるだけ速やかに当該治験に関する説明を行い、治験継続に係わる同意及びその他の適切な同意(4.8.10参照)を求めなければならない。

4.9記録及び報告

4.9.1
治験責任医師は、治験依頼者に報告する必要のある症例報告書及びその他の全ての報告書のデータが、正確、完全で、読み易く、適切な時期に報告されていることを保証するものとする。

4.9.2
症例報告書中の原資料に基づくデータは、原資料と矛盾しないものでなければならない。何らかの矛盾がある場合は、それが説明されなければならない。

4.9.3
症例報告書のいかなる変更又は修正も、これに日付及びイニシャルが付記され、(必要な場合は)説明されなければならず、また当初の記載内容を不明瞭にするものであってはならない(すなわち、監査証跡として保存するものとする)。このことは文書及び電子データの変更又は修正の双方に適用される(5.18.4 (n)参照)。治験依頼者は、治験責任医師及び(又は)その指名する者に、データの修正に関する手引きを提供するものとする。治験依頼者は、治験依頼者が指名した者によって行われた症例報告書の変更又は修正が文書に記録され、必要なものであり、かつ治験責任医師が承認したものであることを保証するための手順書を作成しておかなければならない。治験責任医師は、変更及び修正の記録を保管するものとする。

4.9.4
治験責任医師/治験実施医療機関は、「治験実施のための必須文書」(第8章参照)及び適用される規制要件を遵守して治験に関連する文書を保存するものとする。治験責任医師/治験実施医療機関は、これらの記録が保存義務期間中に紛失又は廃棄されることがないよう措置を講じなければならない。

4.9.5
必須文書は、当該治験薬のICH地域における最終の製造(輸入)承認後最低2年間、かつICH地域において当該治験薬に係る製造(輸入)申請が審査中でなくなるまで、又は臨床開発の公式中止後最低2年間、保存するものとする。ただし、これらの文書は、適用される規制要件又は治験依頼者との合意によって必要とされる場合は、これよりも長期間保存するものとする。これらの文書を保存する必要がなくなる時期について治験責任医師/治験実施医療機関に知らせるのは、治験依頼者の責任である(5.5.12参照)。

4.9.6
治験に係わる金銭の支払に関し、治験依頼者と治験責任医師/治験実施医療機関の間で、文書で取り決めておかねばならない。

4.9.7
治験責任医師/治験実施医療機関は、モニター、監査担当者、治験審査委員会又は規制当局の求めに応じ、全ての治験関連記録を直接閲覧に供するものとする。

4.10治験の進行状況報告

4.10.1
治験責任医師は、治験の現況の概要を年に1回又は治験審査委員会の求めに応じてそれ以上の頻度で、治験審査委員会に文書をもって提出するものとする。

4.10.2
治験責任医師は、治験の実施に重大な影響を与え、及び(又は)被験者の危険を大きく増大させるようなあらゆる変更について、治験依頼者、治験審査委員会(3.3.8参照)及び適当な場合には治験実施医療機関に速やかに報告書を提出するものとする。

4.11安全性に関する報告

4.11.1
治験責任医師は、全ての重篤な有害事象を治験依頼者に速やかに報告するものとする。ただし、治験実施計画書又は他の文書(例えば、治験薬概要書)において、緊急報告が不要であることが規定された有害事象に関してはこの限りではない。緊急報告の後に、文書による詳細な報告を速やかに行うものとする。これらの報告においては、被験者に割り当てられた特定のコード番号によって被験者を識別すべきで、被験者の氏名、身元が特定できる番号及び(又は)住所を使用してはならない。治験責任医師は、規制当局及び治験審査委員会に対する予測できない重篤な副作用の報告に関して、適用される規制要件を遵守するものとする。

4.11.2
治験責任医師は、治験実施計画書において安全性評価のために重要であると規定された有害事象及び(又は)臨床検査の異常値についても、治験依頼者が治験実施計画書で規定した報告要件及び期限を守って、治験依頼者に報告しなければならない。

4.11.3
治験責任医師は、報告した死亡例について、治験依頼者及び治験審査委員会に対して追加 要求された情報(例えば剖検報告書及び末期の医療記録等)を提出するものとする。

4.12治験の中止又は中断

治験が何らかの理由により中止又は中断された場合、治験責任医師/治験実施医療機関は被験者に速やかにその旨を通知し、被験者に対する適切な治療及び事後処理を保証し、また適用される規制要件によって要求される場合には、規制当局にも通知するものとする。さらに、以下の措置をとるものとする。
4.12.1
治験責任医師が治験依頼者の事前同意を得ずに治験を中止又は中断した際は、治験責任医師は、必要とされる場合には治験実施医療機関にその旨を通知し、治験責任医師/治験実施医療機関は、治験依頼者及び治験審査委員会に速やかにその旨を通知する。また治験責任医師/治験実施医療機関は、治験依頼者及び治験審査委員会に対して中止又は中断に関する詳細な文書による説明を行わなければならない。

4.12.2
治験依頼者が治験を中止又は中断した際は(5.21参照)、治験責任医師は、適切な場合には治験実施医療機関に速やかにこれを通知し、治験責任医師/治験実施医療機関は治験審査委員会に対して、速やかに中止又は中断につき文書で詳細に説明するものとする。

4.12.3
治験審査委員会が承認の取消し又は保留を行った場合は(3.1.2及び3.3.9参照)、治験責任医師は、適当な場合には治験実施医療機関にこれを通知し、治験責任医師/治験実施医療機関は速やかにその旨を治験依頼者に通知し、かつ文書で取消し又は保留について詳細に報告するものとする。

4.13 最終報告

治験が終了した場合、治験責任医師は、要求される場合には治験実施医療機関にその旨を通知し、治験責任医師/治験実施医療機関は、治験審査委員会にその結果の概要を報告し、規制当局に対しても規制要件に従って報告するものとする。

5.治験依頼者

5.1治験の品質保証及び品質管理

5.1.1
治験依頼者は、治験の実施並びにデータの作成、記録及び報告が、治験実施計画書、GCP及び適用される規制要件を遵守して行われることを保証するために、標準業務手順書に基づく品質保証及び品質管理システムを履行し、保持する責任を有する。

5.1.2
治験依頼者は、治験に関連する全ての施設、原データ/原資料及び報告書を治験依頼者によるモニタリング及び監査、並びに国内外の規制当局による査察に際して直接閲覧(1.21参照)が可能であるようにしておくことについて、治験に関与する全ての者の同意を治験開始前に得ておく責任がある。

5.1.3
治験に関連する全てのデータの信頼性とその適正な処理を保証するために、データ取扱いの各段階に品質管理を適用するものとする。

5.1.4
治験依頼者は、治験責任医師/治験実施医療機関及びその他治験に関与する全ての者との合意を、治験実施計画書の一部又は別個の合意文書として文書化しておかなければならない。

5.2開発業務受託機関(CRO)

5.2.1
治験依頼者は、治験に関連する業務の一部又は全てを開発業務受託機関に委託することができるが、治験データの品質と完全性に関する最終責任は常に治験依頼者が負う。開発業務受託機関は品質保証及び品質管理を履行するものとする。

5.2.2
治験依頼者が開発業務受託機関に委託した治験に関連する業務は、全て文書に明記されなければならない。

5.2.3
治験に関連する業務のうち、開発業務受託機関に明確に委託されていないものは、全て治験依頼者が担うものとする。

5.2.4
本ガイドラインの治験依頼者に関する取決めは、開発業務受託機関が受託した治験に関連する業務の範囲内において、開発業務受託機関にも適用される。

5.3医学的専門知識

治験依頼者は、治験に関する医学的な疑問又は問題について速やかに助言を得ることができるであろう適格な医学専門家を指名するものとする。必要に応じて、この目的のために外部のコンサルタントを任命してもよい。

5.4治験のデザイン

5.4.1
治験依頼者は、治験実施計画書及び症例報告書のデザイン並びに解析計画の立案から、解析の実施並びに治験の中間報告及び総括報告書作成までの治験の全過程を通じ、適格な者(例えば、生物統計学者、臨床薬理学者、医師)を活用すべきである。

5.4.2
治験のデザイン、治験実施計画書の作成及び治験の実施に関しては、第6章「治験実施計画書及びその改訂」、ICHの「治験の総括報告書の構成及び内容に関するガイドライン」及び他の関連するICHガイドラインを参照すること。

5.5治験の管理、データの取扱い及び記録の保存

5.5.1
治験依頼者は、治験業務の総括的な監督、データの取扱い、データの検証、統計解析の実施及び治験の総括報告書等の作成に当たって、適格な者を活用すべきである。

5.5.2
治験依頼者は、治験の進行、安全性情報及び重要な有効性エンドポイントを適宜評価し、治験依頼者に治験の継続、変更、又は中止を提言するために、独立データモニタリング委員会(IDMC)を設立することを考慮することができる。IDMCは、業務手順書を作成し、全ての会合の記録を保存しなければならない。

5.5.3
電子データ処理システム及び(又は)遠隔操作電子データシステムを用いる場合、治験依頼者は、
(a)電子データ処理システムが、完全性、正確性、信頼性及び意図された性能についての治験依頼者の要件を満たしていることを保証し、文書化する(すなわちバリデーション)。
(b)これらのシステムを使用するための標準業務手順書を整備する。
(c)システムが、入力済みデータを消去せずに修正することが可能であり、また、修正の記録を文書で残すことが可能である(すなわち監査証跡、データ入力証跡、修正証跡が残る)ようにデザインされていることを保証する。
(d)許可なくデータにアクセスすることを防止するセキュリティ・システムを整備する。
(e)データの修正を行うことを許可された者の名簿を整備する。(4.1.5及び4.9.3参照)
(f)データの適切なバックアップを行う。
(g)盲検化を行う場合は、盲検性を保全する(例えばデータの入力及び処理において盲検性を保持する)。

5.5.4
処理中にデータを変換する場合には、処理前のデータ及び観察記録と処理後のデータを常に対比できるようにしておかねばならない。

5.5.5
治験依頼者は各被験者について報告された全てのデータの識別を可能にする明確な被験者識別コード(1.58参照)を用いるものとする。

5.5.6
治験依頼者又は他のデータ所有者は、治験依頼者が保存すると規定された治験関連の必須文書の全てを保存しなければならない(第8章参照)。

5.5.7
治験依頼者は、自らが保存すべき必須文書の保存にあたっては、当該医薬品が承認されている国及び(又は)承認申請を行う予定の国において適用される規制要件を遵守するものとする。

5.5.8
治験依頼者は、治験薬の開発を(すなわち、その効能・効果、用法・用量又は製剤のいずれか或いは全てについて)中止する場合、自らが保存すべき必須文書を、公式の中止の日から最低2年間又は適用される規制要件に従って保存するものとする。

5.5.9
治験依頼者は、治験薬の開発を中止する場合には、その旨を全ての治験責任医師/治験実施医療機関及び全ての規制当局に通知するものとする。

5.5.10
データの所有権を譲渡した場合は全て、適用される規制要件に従って、関連する規制当局に報告するものとする。

5.5.11
治験依頼者が保存すべき必須文書は、当該治験薬のICH地域における最終の製造(輸入)承認後最低2年間かつICH地域における製造(輸入)申請で審査中となっているものがなくなるまで、又は臨床開発の公式中止後最低2年間、保存するものとする。ただし、これらの文書は、適用される規制要件又は治験依頼者によって必要とされる場合は、これよりも長期間保存するものとする。

5.5.12
治験依頼者は、治験責任医師/治験実施医療機関に記録の保存につき文書で通知し、また 治験に関連する記録の保存が不要になった時に治験責任医師/治験実施医療機関に文書で 通知するものとする。

5.6治験責任医師の選定

5.6.1
治験依頼者は、治験責任医師/治験実施医療機関を選定する責任を負う。各治験責任医師は、訓練と経験により当該治験を適切に実施し得る要件を満たし、十分な資源を有していなければならない(4.1、4.2 参照)。多施設共同治験において、治験調整委員会の設置
及び(又は)治験調整医師の選定が行われる場合には、それらの設置及び(又は)選定は治験依頼者の責任である。

5.6.2
治験依頼者は、治験責任医師/治験実施医療機関と治験実施の合意をする前に、治験責任医師/治験実施医療機関に治験実施計画書及び最新の治験薬概要書を提供し、治験責任医師/治験実施医療機関が提供された治験実施計画書及びその他の情報を検討するのに十分な時間を与えなければならない。

5.6.3
治験依頼者は、以下の事項について、治験責任医師/治験実施医療機関から合意を得るものとする。
(a)GCP、適用される規制要件、及び治験依頼者が合意しかつ治験審査委員会が承認した治験実施計画書を遵守して、治験を実施すること(4.1.3及び4.5.1参照)。
(b)データの記録/報告に関する手続きを遵守すること。
(c)モニタリング、監査及び査察を受け入れること(4.1.4参照)。
(d) 治験に関連する必須文書を、治験依頼者が治験責任医師/治験実施医療機関に保存の必要がなくなったことを通知するまで保存すること(4.9.4及び5.5.12参照)。

治験依頼者及び治験責任医師/治験実施医療機関は、治験実施計画書又はそれに代わる文書に署名することにより、この合意を確認しなければならない。

5.7業務の分担

治験依頼者は、治験を開始する前に治験に関連する全ての業務を確定し、割り当てるものとする。

5.8被験者及び治験責任医師に対する補償

5.8.1
治験依頼者は、適用される規制要件が要求する場合には、治験に係わる賠償請求等に備えて保険に加入するか、又は治験責任医師/治験実施医療機関に代わって賠償請求等に応じなければならない。ただし、医療過誤及び(又は)不注意により生じたものは除く。

5.8.2
治験依頼者は、適用される規制要件を遵守して、被験者の治験に関連した健康被害の治療に要する費用に関する方針と手順を定めておかなければならない。

5.8.3
被験者に対して補償する際には、適用される規制要件を遵守した方法により行うものとする。

5.9治験に関連する支払

治験に係わる金銭の支払については、治験依頼者と治験責任医師/治験実施医療機関との間の合意事項として文書に記録すべきである。

5.10規制当局への届出

治験を開始する前に、治験依頼者(又は、適用される規制要件が要求する場合は、治験依頼者と治験責任医師)は、適用される規制要件に従って、該当する規制当局が定める治験届を提出し、治験を開始することについて審査、受理及び(又は)許可を受けなければならない。全ての届出には、日付が記載され、治験実施計画書を識別するのに十分な情報が含まれなければならない。

5.11治験審査委員会による審査結果の確認

5.11.1
治験依頼者は、治験責任医師/治験実施医療機関から下記の文書を入手しなければならない。
(a)治験責任医師/治験実施医療機関が審査を依頼した治験審査委員会の名称と所在地
(b)治験審査委員会がGCP及び適用される法規等に従って組織され、活動している旨を、治験審査委員会が自ら確認した文書
(c)治験審査委員会の承認の記録並びに、治験依頼者が要求する場合には最新の治験 実施計画書、同意文書及びその他の被験者への説明文書、被験者の募集手続き、被験者に対する支払と補償に関連した文書及び治験審査委員会から要求されたその他の書類の最新版

5.11.2
治験依頼者は、治験審査委員会が治験実施計画書、同意文書及びその他の被験者への説明文書並びに(又は)その他の手続きの修正など、治験に係わる何らかの変更を条件に承認した場合には、治験責任医師/治験実施医療機関から治験審査委員会が承認した修正後の文書及びその承認の日付を入手しなければならない。

5.11.3
治験依頼者は、治験責任医師/治験実施医療機関から、治験審査委員会におけるあらゆる再審査の承認に関する記録と日付及び承認の取消又は保留に関する記録と日付を入手しなければならない。

5.12治験薬に関する情報

5.12.1
治験依頼者は、治験実施計画の作成時に、当該治験で採用される投与経路、用量、投与期間及び投与対象集団の妥当性を支持できるだけの安全性及び有効性に関する十分なデータが非臨床試験及び(又は)臨床試験から得られていることを保証しなければならない。

5.12.2
治験依頼者は、重要な新たな情報が得られ次第、治験薬概要書を改訂しなければならない(第7章参照)。

5.13治験薬の製造、包装、表示及びコード化

5.13.1
治験依頼者は、治験薬(実対照薬及びプラセボを含む)がその開発段階に応じた適切な特徴を有し、適用されるGMPを遵守して製造され、該当する場合には、盲検性が維持されるような方法でコード化され、表示されていることを保証しなければならない。さらに、適用される規制要件を遵守して表示しなければならない。

5.13.2
治験依頼者は、治験薬に許容される保存温度、保存条件(遮光等)、保存期間、溶解液及び溶解方法並びに注入器具を定めなければならない。治験依頼者は、これらの事項を治験に関与する全ての者(モニター、治験責任医師、薬剤師、治験薬管理者等)に知らせなければならない。

5.13.3
治験薬は、輸送及び保存中に汚染や許容できない劣化を防止するように包装されなければならない。

5.13.4
盲検下の治験では、治験薬のコード化に際して、医療上の緊急時に当該治験薬がどの薬剤であるかを直ちに識別できるようにし、かつ盲検性が破られたことを検知できるようにしておかなければならない。

5.13.5
開発期間中に治験薬又は対照薬の製剤組成が大きく変更される場合、製剤組成に関する追加の試験(安定性、溶出性又は生物学的利用性等)により、それらの変更が当該治験薬又は対照薬の薬物動態上の性質を大きく変えるか否かを評価するのに必要な成績を、新しい製剤組成の薬剤の使用前に入手しておかなければならない。

5.14治験薬の交付及び取扱い

5.14.1
治験依頼者は、治験責任医師/治験実施医療機関に対し治験薬を交付する責任を有する。

5.14.2
治験依頼者は、全ての必要とされる文書(例えば、治験審査委員会及び規制当局による承認)を得るまでは、治験責任医師/治験実施医療機関に治験薬を交付してはならない。

5.14.3
治験依頼者は、文書化された手順書に、治験責任医師/治験実施医療機関が治験薬の取扱い及び保存並びにそれらの記録に際し従うべき指示が記載されていることを保証しなければならない。当該手順書は、適切で確実な受領、取扱い、保存、処方、並びに未使用治験薬の被験者からの返却及び治験依頼者への返却(又は治験依頼者が認め、適用される規制要件を満たしている場合には、他の処分方法)について規定しなければならない。

5.14.4
治験依頼者は、
(a)治験薬が適切な時期に治験責任医師に交付されるようにしなければならない。
(b)治験薬の出荷、受領、処分、返却及び廃棄の記録を保存しなければならない(第8章参照)。
(c)治験薬の回収及びその記録のためのシステムを保持しなければならない(例えば、欠陥品の回収、治験終了後の回収、有効期限切れの治験薬の回収)。
(d)未使用の治験薬の処分及びその記録作成のためのシステムを保持しなければならない。

5.14.5
治験依頼者は、
(a)治験薬が、使用期間中安定であることを保証しなければならない。
(b)必要となる場合には、規格を再確認できるよう十分な量の治験薬を確保し、ロットサンプルの分析と特性の記録を保存しなければならない。安定性が確保される限りは、ロットサンプルは治験データの解析が終了するまで又は適用される規制要件の規定のどちらか長い期間保存しなければならない。

5.15記録閲覧

5.15.1
治験依頼者は、治験に関連するモニタリング、監査、治験審査委員会の審査及び規制当局の査察時に治験責任医師/治験実施医療機関が原データ/原資料を直接閲覧に供することについて、治験実施計画書又は他の合意文書中に明記されていることを保証しなければならない。

5.15.2
治験依頼者は、治験に関連するモニタリング、監査、治験審査委員会の審査及び規制当局の査察時に、被験者の原医療記録が直接閲覧されることについて、各被験者が文書により同意していることを確認しなければならない。

5.16安全性情報

5.16.1
治験依頼者は、治験薬の安全性を継続的に評価する責任を有する。

5.16.2
治験依頼者は、被験者の安全に悪影響を及ぼし、治験の実施に影響を与え、又は治験継続に関する治験審査委員会の承認を変更する可能性のある情報を、関係する全ての治験責任医師/治験実施医療機関及び規制当局に速やかに通知しなければならない。

5.17副作用報告

5.17.1
治験依頼者は、重篤で予測できない全ての副作用を全ての関係する治験責任医師/治験実施医療機関、治験審査委員会(要求される場合)及び規制当局に速やかに報告しなければならない。

5.17.2
かかる緊急報告は、適用される規制要件及びICHガイドライン「治験中に得られる安全性情報の取り扱いについて」に従わなければならない。

5.17.3
治験依頼者は、適用される規制要件に従って、全ての最新の安全性情報及び定期報告を規制当局に提出しなければならない。

5.18モニタリング

5.18.1目的
治験のモニタリングの目的は、下記のことを確認することである。
(a)被験者の人権と福祉が保護されていること
(b)報告された治験データが正確かつ完全で、原資料に照らして検証できること
(c)治験が最新の治験実施計画書、GCP並びに適用される規制要件を遵守して実施されていること

5.18.2モニターの選定及び要件
(a)モニターは、治験依頼者により任命されなければならない。
(b)モニターは、適切に訓練され、治験を十分にモニターするために必要な科学的及び(又は)臨床的知識を有していなければならない。モニターの資格は、文書で記 録されるべきである。
(c)モニターは、治験薬、治験実施計画書、同意文書及びその他の被験者への説明文書、治験依頼者の標準業務手順書、GCP並びに適用される規制要件を熟知していなければならない。

5.18.3モニタリングの範囲及び方法
治験依頼者は、治験が適切にモニターされていることを保証しなければならない。治験依頼者は、モニタリングの適切な範囲及び方法を決定するものとする。この決定は、治験の目的、デザイン、複雑さ、盲検性、規模及びエンドポイントなどを考慮して行われるべきである。一般に、治験開始前、実施中及び終了後に治験実施施設を訪問してモニタリングを行う必要がある。しかし例外的な状況下では、治験依頼者は、中央モニタリングを採用することができる。その場合には、中央モニタリングが、治験責任医師の訓練及び会合並びに広範囲にわたるガイダンス等の手順を併用することによって、GCPを遵守した適切な治験の実施を保証できなければならない。統計学的にコントロールされた抽出法は、検証するデータの選定を行う際の適当な方法となり得る。

5.18.4 モニターの責務
モニターは、治験依頼者の要求に従って、それが当該治験及び治験実施施設について適切であり、かつ必要な場合には、下記の活動を行うことによって、治験が適正に実施され、記録されていることを保証しなければならない。
(a)治験依頼者と治験責任医師との間の情報交換の主役を務めること。
(b)治験責任医師が適切な要件と資源を有し(4.1, 4.2, 5.6参照)、それが治験期間を通して継続していること、また検査室、必要な装置及びスタッフを含む設備が、治験を安全かつ適正に実施するのに十分であり、それが治験期間を通して継続していることを確認すること。
(c)治験薬に関し下記の点を確認すること。
(i)保存期間、保存条件が許容できるものであり、治験期間を通して十分な量が交付されていること
(ii)治験薬が適格な被験者のみに、治験実施計画書で規定された用量で投与されていること
(iii) 被験者に対し、治験薬の適正な使用、取扱い、保存及び返却に関して、必要な指示がなされていること
(iv)治験実施施設での治験薬の受領、使用及び返却が適切に管理され、記録されていること
(v)治験実施施設での未使用治験薬の処分が、適用される規制要件及び治験依頼者との合意に従ってなされていること
(d)治験責任医師が、承認された治験実施計画書に従っていることを確認すること。
(e)参加する前に、各被験者から文書によるインフォームド・コンセントが得られていることを確認すること。
(f)治験責任医師が、治験を適正に実施し、適用される規制要件を遵守するのに必要な、治験薬概要書の最新版、全ての文書及びその他の全ての供給物を受領していることを確認すること。
(g)治験責任医師及びその治験スタッフが、治験について十分情報を得ていることを確認すること。
(h)治験責任医師及びその治験スタッフが、治験実施計画書及び治験依頼者と治験責任医師/治験実施医療機関との間のその他の合意文書に基づいて、治験における各々の役割を果たしており、このような役割を資格のない者に委任していないことを確認すること。
(i)治験責任医師が適格な被験者のみを治験に組み入れていることを確認すること。
(j)被験者の登録状況を報告すること。
(k)正確、完全かつ最新の原資料及び治験に関する記録が保存されていることを確認すること。
(l)治験責任医師が、要求される全ての報告、通知、申請及び提出を行い、それらの文書が正確、完全で、適切な時期に行われ、読みやすく、日付が記載されており、該当する治験を識別できることを確認すること。
(m)症例報告書の内容と原資料及び他の治験に関する記録類を照合して、これらが正確で完全であることを確認すること。モニターは特に次の点を確認すること。
(i) 治験実施計画書が要求するデータが症例報告書に正確に記載され、それらが原資料と一致していること
(ii) 用量及び(又は)治療法の変更があった場合は、その全てが各々の被験者について記録されていること
(iii) 有害事象、併用療法及び併発症が治験実施計画書に従って症例報告書に記載されていること
(iv)被験者が来院しなかった日、実施されなかった試験及び検査が症例報告書に明確に記載されていること
(v) 登録された被験者の全ての中止例、脱落例が症例報告書に記載され、その理由等が説明されていること
(n)治験責任医師に、症例報告書の記載ミス、記載漏れ又は判読不能事項を全て知らせること。またモニターは、適切な修正、追記又は削除がなされ、日付が記入され、必要な場合にはその理由等が説明されており、かつ治験責任医師又は治験責任医師に代わって症例報告書の変更にイニシアルを記載することが委任されている治験スタッフによって、イニシアルが記載されていることを確認しなければならない。かかる治験スタッフへの委任は、文書化されていなければならない。
(o)全ての有害事象が、GCP、治験実施計画書、治験審査委員会、治験依頼者及び適用される規制要件によって要求されている期間内に、適切に報告されているか否かを確定すること。
(p)治験責任医師が必須文書を保存しているか否かを確定すること(第8章参照)。
(q)治験実施計画書、標準業務手順書、GCP及び適用される規制要件からの逸脱事項を治験責任医師に伝え、そのような逸脱の再発を防止するための適切な措置を講ずること。

5.18.5モニタリングの手順
モニターは、治験依頼者の確立された標準業務手順書及び当該治験のモニタリングに関して治験依頼者が特に定める手順に従わなければならない。

5.18.6モニタリング報告書
(a)モニターは、治験実施施設へ訪問又は治験に関連した連絡を行う度に、治験依頼者に報告書を提出しなければならない。
(b)報告書には、日時、場所、モニターの氏名並びに治験責任医師又はその他の接触した相手の氏名を記載しなければならない。
(c)報告書には、モニターが点検した内容の要約並びに重要な発見事項/事実、逸脱及び欠陥、結論、並びに講じられた若しくは講じられる予定の措置及び(又は)遵守を確保するために推奨される措置に関するモニターの見解が記載されていなければならない。
(d)モニタリング報告書に関して治験依頼者とともに行った点検とフォローアップについては、治験依頼者の指名する代理人が文書化しておかなければならない。

5.19監査

治験依頼者が、品質保証の一部として監査を実施する場合には、下記の点を考慮しなければならない。

5.19.1目的
治験依頼者による監査は、通常のモニタリング又は治験の品質管理業務とは独立、分離されたものであり、その目的は、治験の実施並びに治験実施計画書、標準業務手順書、GCP及び適用される規制要件の遵守状況を評価することである。

5.19.2監査担当者の選定及び要件
(a)治験依頼者は、治験とそのシステムに無関係の者を監査担当者として任命すべきである。
(b)治験依頼者は、監査担当者が訓練と経験により監査を適切に実施できる要件を満たしていることを保証しなければならない。監査担当者の資格は、文書で記録されなければならない。

5.19.3監査手順
(a)治験依頼者は、治験とそのシステムに対する監査が、監査の対象、方法及び頻度並びに監査報告書の様式と内容に関する文書化された治験依頼者の手順書に従って行われることを保証しなければならない。
(b)治験依頼者の監査計画及び手順は、治験の規制当局に対する申請上の重要性、被験者数、治験の種類と複雑さ、被験者に対する危険性のレベル及びあらゆる見出 された問題点を指針として決めるべきである。
(c)監査担当者が観察、発見した事項は、文書で記録されなければならない。
(d)監査機能の独立性と価値を保つために、規制当局は、監査報告書を、通常の査察の際に要求すべきでない。規制当局は、重大なGCP不遵守が認められる場合又は法的手続きの過程において、ケースバイケースで、監査報告書の閲覧を求めることができる。
(e)治験依頼者は、適用される法規等により要求される場合は、監査証明書を提出しなければならない。

5.20不遵守

5.20.1
治験依頼者は、治験責任医師/治験実施医療機関又は治験依頼者のスタッフが治験実施計画書、標準業務手順書、GCP及び(又は)適用される規制要件を遵守していない場合は、遵守を確保すべく迅速な措置を講じなければならない。

5.20.2
治験依頼者は、モニタリング及び(又は)監査によって、治験責任医師/治験実施医療機関による重大及び(又は)継続した不遵守が発見された場合には、当該治験責任医師/治験実施医療機関の治験への参加を打ち切らなくてはならない。不遵守のため治験責任医師/治験実施医療機関の参加が打ち切られた場合には、治験依頼者は、規制当局に速やかに報告しなければならない。

5.21治験の中止又は中断

治験依頼者は、治験が中止又は中断された場合には、治験責任医師/治験実施医療機関及び規制当局にその旨とその理由を速やかに報告しなければならない。治験依頼者又は治験責任医師/治験実施医療機関は、治験審査委員会に対しても、適用される規制要件に従って、中止又は中断とその理由を速やかに報告しなければならない。

5.22治験の総括報告書

治験依頼者は、治験の終了又は中止にかかわらず、治験の総括報告書が適用される規制要件に従って作成され、規制当局に提出されることを保証しなければならない。治験依頼者はまた、製造(輸入)承認の申請における治験の総括報告書がICHの「治験の総括報告書の構成と内容に関するガイドライン」の基準に則って作成されていることを保証しなければならない。(注:ICHの「治験の総括報告書の構成と内容に関するガイドライン」には、場合によっては簡略化された報告書が許容されうる旨の規定がある。)

5.23多施設共同治験

治験依頼者は、多施設共同治験に当たって、以下のことを保証しなければならない。

5.23.1
全ての治験責任医師が、治験依頼者及び必要な場合は規制当局が同意し、治験審査委員会が承認した治験実施計画書を厳密に遵守して治験を実施していること。

5.23.2
症例報告書が、多施設共同治験の全施設において必要なデータが収集できるようにデザインされていること。追加的データを収集する治験責任医師には、それを記載するために設計された補足的な症例報告書が併せて提出されなければならない。

5.23.3
治験調整医師及び治験に参加するその他の治験責任医師の責務が、治験開始前に文書で定められていること。

5.23.4
全ての治験責任医師に対し、治験実施計画書の遵守方法、臨床上及び検査上の所見の評価に関する統一基準の遵守方法並びに症例報告書の記入方法が説明されていること。

5.23.5
治験責任医師の間の連絡が容易であること。

6.治験実施計画書及びその改訂

治験実施計画書には一般に下記の事項を記載しなければならない。ただし、施設に特有の情報が治験実施計画書の分冊又は別の合意文書に記載される場合もあり、下にあげた情報の一部は、治験薬概要書など、治験実施計画書に引用されている他の文書に記載される場合もある。

6.1概要

6.1.1
治験実施計画書の標題、それを特定する番号及び日付。いかなる改訂についても、改訂番号及び日付が記載されなければならない。

6.1.2
治験依頼者及びモニター(治験依頼者以外の場合)の氏名及び住所

6.1.3
治験依頼者を代表して治験実施計画書に署名する権限のある者の氏名及び役職名

6.1.4
当該治験に関する治験依頼者側の医学専門家(又は歯科医師)の氏名、役職名、住所及び電話番号

6.1.5
治験責任医師の氏名及び役職名、並びに治験実施施設の所在地及び電話番号。

6.1.6
治験実施施設が関与する全ての医学的(又は歯学的)判断に対し責任を有する医師(又は歯科医師)の氏名、役職名、住所及び電話番号(治験責任医師以外の場合)。

6.1.7
治験に関連する臨床検査施設及び他の医学的及び(又は)技術的部門及び(又は)治験実施医療機関の名称及び所在地。

6.2背景情報

6.2.1
治験薬の名称及びその他の説明

6.2.2
非臨床試験及び臨床試験から得られた臨床的に重要な所見の要約

6.2.3
被験者に対する既知及び可能性のある危険と利益の要約

6.2.4
投与経路、用法・用量及び投与期間に関する説明と根拠

6.2.5
当該治験が治験実施計画書、GCP及び適用される規制要件を遵守して実施される旨の陳述

6.2.6
治験対象集団の説明

6.2.7
治験に関連し、その背景を明らかにする参考文献及びデータ

6.3治験の目的

治験の目的についての詳細な記述

6.4治験のデザイン

治験の科学的完全性及び治験から得られるデータの信頼性は本質的に治験のデザインに依存する。治験のデザインの説明には、下記の事項を含めるべきである。
6.4.1
治験中に測定される主要評価項目及び副次的評価項目(それがある場合)に関する説明

6.4.2
実施される治験の種類/デザインの説明(例えば、二重盲検、プラセボ対照、並行群間試験など)、並びに治験のデザイン、手順及び段階等を図式化した表示

6.4.3
バイアスを最小限にする又は避けるために取られる方法の説明
(a)無作為化
(b)盲検化

6.4.4
治験治療並びに治験薬の用法・用量の説明。治験薬の剤型、包装及び表示に関する記載も含む。

6.4.5
被験者の参加予定期間、及びフォローアップ(ある場合)を含む全ての治験の順序と期間の説明

6.4.6
個々の被験者並びに治験の一部及び全体の「中止規定」又は「中止基準」の説明

6.4.7
プラセボ及び対照薬(ある場合)を含む治験薬の管理の手順

6.4.8
治験治療の無作為化のコードの保管及びコードの開封手続き

6.4.9
症例報告書に直接記入され(すなわち、その記入以前に文書又は電子的に記録されたデータがなく)、かつ原データと解すべきデータの特定

6.5被験者の選択・除外・中止基準

6.5.1
選択基準

6.5.2
除外基準

6.5.3
中止基準(すなわち治験薬治療/治験治療を中止する基準)と手順について、下記の点を明らかにする。
(a)いつ、どのようにして被験者の治験を中止するか
(b)治験を中止した被験者に関して、どのようなデータをどのようなタイミングで集めるか
(c)被験者の交代があるか、どのようにして行うか
(d)治験薬治療/治験治療を中止した被験者に対するフォローアップ

6.6被験者の治療

6.6.1
用いられる全ての薬物の名称、用法・用量、投与経路、投与期間等の内容(各治験薬治療/治験治療/治験群の被験者に対するフォローアップ期間を含む)

6.6.2
治験実施前及び(又は)治験実施中に許容される治療法/治療(緊急時の治療を含む)並びに禁止される治療法

6.6.3
被験者の服薬、その他の取り決め事項の遵守状況を確認する手順

6.7有効性の評価

6.7.1
有効性評価指標の特定

6.7.2
有効性評価指標に関する評価、記録及び解析の方法並びにそれらの実施時期

6.8安全性の評価

6.8.1
安全性評価指標の特定

6.8.2
安全性評価指標に関する評価、記録及び解析の方法並びにそれらの実施時期

6.8.3
有害事象及び併発症を収集し、記録し、報告する手順

6.8.4
有害事象発現後の被験者のフォローアップのタイプ及び期間

6.9統計解析

6.9.1
計画された中間解析の時期を含む、実施される統計解析手法の説明

6.9.2
計画された登録症例数。多施設共同治験においては、各治験実施施設の登録症例数が特定されるべきである。治験の検出力及び臨床上の理由からの考察を含む症例数設定の根拠。

6.9.3
用いられる有意水準

6.9.4
治験の中止基準

6.9.5
欠落、不採用及び異常データを説明する手順

6.9.6
当初の統計解析計画からの逸脱を報告する手順(当初の統計解析計画からの逸脱は全て、治験実施計画書及び(又は)治験の総括報告書に記載し説明すべきである。)

6.9.7
解析の対象となる、被験者の選択(無作為割り付けを受けた全症例、治験薬投与を受けた全症例、全適格例、評価可能症例など)

6.10原データ/原資料の直接閲覧

治験依頼者は、治験実施計画書又は別の合意文書中に、治験責任医師/治験実施医療機関が、治験に関連するモニタリング、監査、治験審査委員会による審査及び当局の査察の際に、原データ/原資料を直接閲覧に供すべき旨が記載されていることを保証するものとする。

6.11 治験の品質管理及び品質保証

6.12倫理

治験に関連する倫理的配慮の記述

6.13データの取扱い及び記録の保存

6.14報酬及び保険

別の合意文書に記載されていない場合には、金銭の支払い及び保険について

6.15公表に関する取決め

別の合意文書に記載されていない場合には、公表に関する取決め

6.16補遺

ICH「治験の総括報告書の構成と内容に関するガイドライン」を参照。

7.治験薬概要書

7.1  序

治験薬概要書(以下、「概要書」という)は、治験薬の治験の実施に必要な臨床及び非臨床試験の成績をまとめたものである。概要書の目的は、治験責任医師及びその他治験に関与する者が、治験実施計画書の主要項目、例えば投与量、投与回数・間隔、投与方法及び被験者の安全性を監視するための手順等の合理的根拠を理解し、かつそれらを遵守するための情報を提供することにある。また概要書は治験実施期間中の被験者の管理に必要なその他の知識を提供するものでもある。概要書に記載されるデータは、簡潔で、要領よく、客観的で公平、かつ販売促進に係わりのない形で提示されねばならない。それによって治験責任医師等はデータを理解し、提案されている治験に係わる危険性と利点について自ら偏りなく適切に評価することが可能となる。このような理由から、概要書の編集には一般的には医師が参加すべきであるが、内容に関してはデータを提供した専門部門の承認を得ておかなければならない。
本章は、概要書に記載すべき最小限の情報について述べ、その編集上の割付け(レイアウト)について提言するものである。利用しうる情報の種類や範囲は、開発のステージによって変わるものと考えられる。治験薬が市販され、その薬理学的性質が一般の医師に広く理解されている場合には、広範な情報を掲載した概要書は必要ない場合もありうる。もし、基本的な製品情報冊子、製品の添付文書又は表示内容等が、治験責任医師等にとって重要な治験薬に関する最新、包括的で詳細な情報を含み、かつ規制当局が許容する場合には、それらをもって概要書に代えることができよう。市販薬について新たな使用法(例えば新しい適応など)のための治験を実施する場合には、新たな使用法のための概要書を作成しなくてはならない。
概要書は少なくとも毎年見直しを行い、治験依頼者の手順書に従い、必要に応じて改訂されなくてはならない。また、治験薬の開発のステージに応じて、あるいは治験薬に関連する新たな情報が得られた場合には、より頻回に改訂することが適切であろう。しかし、新しい情報が非常に重要である場合には、GCPの規定に則り概要書の改訂に先立って、治験責任医師のみならず、時には治験審査委員会及び(又は)規制当局にも報告する必要がある。
一般的には、最新の概要書を治験責任医師に提出するのは、治験依頼者の責務であり最新の概要書を該当する治験審査委員会に提出するのは、治験責任医師の責務である。治験責任医師が自ら治験依頼者を兼ねる場合には、その治験責任医師は概要書を当該医薬品の製造販売業者から入手できるか否か確かめる必要がある。またかかる治験責任医師が治験薬を提供する場合には、その治験責任医師が他の治験関係者に対して必要な情報を提供しなければならない。この場合、正式の概要書を作成できない場合には、治験依頼者兼治験責任医師は治験実施計画書の背景情報の項を拡張し、本章に記す最小限の最新情報を盛り込むことによって概要書に代えることができる。

7.2 一般的事項

概要書には、下記の事項を記載する。

7.2.1 表紙
治験依頼者の名称、治験薬を識別する記号等(例:治験薬コード番号、化学名又は承認された一般名並びに法的に許され、かつ治験依頼者が希望する場合には販売名)及び概要書の発行日を記載する。
また、概要書の版番号並びに改訂前の版番号及びその編集日を記載することが望ましい。例を付録1に示す。

7.2.2 秘密保全に関する記述
治験依頼者は、治験責任医師又は概要書の受領者に対して、概要書を治験責任医師と共同者チーム及び治験審査委員会に限定して提供される秘密情報として取り扱うよう要請してもよい。

7.3 治験薬概要書の内容

概要書は下記の項目から成り、必要に応じてそれぞれに参考資料名を付記する。

7.3.1 目次
目次の例を付録2に示す。

7.3.2 要約
治験薬の臨床開発のステージに応じて、その時点で得られている物理、化学、薬剤、薬理、毒性、薬物動態、代謝及び臨床に関する重要な情報について簡潔な要約(2頁を超えないことが望ましい)を記載する。

7.3.3 序文
治験薬の化学名(及び承認されている場合には一般名と販売名)、全ての活性成分、治験薬の薬理学上の分類と分類内での期待される位置付け(例えば、優れた点)、治験実施の根拠、予期される予防的、治療的又は診断的適応について簡潔に述べた上で、最後に治験薬を評価する上で留意すべき全般的事項について記載する。

7.3.4 物理的・化学的及び薬剤学的性質並びに製剤組成
治験薬の原体の化学式及び(又は)構造式を記載し、その物理的・化学的性質及びその薬剤学的性質について簡潔に要約する。
安全性確保のため治験中に適切な措置を講じうるようにするため、臨床的に意味があると考えられる場合には、賦形剤を含む製剤組成とその組成の妥当性を示す必要がある。また治験薬の貯蔵法と取扱いについても指示すべきである。
他の既知化合物との構造的類似性があれば、それについても記載する。

7.3.5 非臨床試験成績

序:
治験薬の薬理、毒性、薬物動態及び薬物代謝に関連する全ての非臨床試験の成績を要約する。この要約においてはそれぞれの試験について、用いられた方法、結果、並びに検討された治療効果と起こり得る不都合な意図しない作用との関連性について考察する。
記載すべき情報には、下記のうち、入手可能で適切な情報が含まれる。
・試験動物の種
・各群の動物数と性
・単位投与量(例:mg/kg )
・投与間隔
・投与経路
・投与期間
・全身分布に関する情報
・暴露終了後の観察期間
・下記を含む試験結果
-薬理学的又は毒性学的効果の性質と発生頻度
-薬理学的又は毒性学的効果の重症度又は強度
-効果発現時間
-効果の回復性
-効果持続時間
-用量反応性

説明を分り易くするために、可能な限り表に示すか、又は箇条書きにする。
下記の各項ごとに観察された効果の用量反応性、人への外挿性、また人で今後研究すべき事項などを含め、試験で得られた最も重要な知見について考察をする。
可能な場合には、同じ動物種で得られた有効量と無毒性量を比較すべきである(すなわち、治療係数について考察する)。この情報と提案されている人での投与量との関連性についても記述すべきである。この場合可能な限り体重当り投与量(mg/kg)ではなく、血中又は組織内濃度に基づいて比較すべきである。

(a) 薬理作用
治験薬及び適切な場合にはその重要な代謝物の薬理的性質を要約する必要がある。
この要約には、治療効果の評価に関連した試験(例:有効性を示すモデルでの試験、受容体結合及び特異性に関する試験)のみならず、安全性の評価に関連する試験(例:意図した治療効果以外の薬理作用に関する特別な試験)も含める必要がある。

(b) 薬物動態及び薬物代謝
試験した全ての動物種における治験薬の薬物動態、生体内変換並びに代謝・排泄に関する成績の要約を記載する。さらにこれらの成績に基づいて、治験薬とその代謝物の吸収、及び局所的・全身的生物学的利用性、並びにこれらと治験薬の薬理作用、毒性との関連性について動物種ごとに考察する必要がある。

(c) 毒性
各種の動物について研究された毒性の要約を、適切な場合には下記の見出しに従って記載する。
・単回投与試験
・反復投与試験
・がん原性試験
・特殊毒性試験(例えば刺激性試験や感作性試験)
・生殖毒性試験
・遺伝毒性(変異原性)試験

7.3.6 臨床試験成績

序:
人で得られた治験薬の効果について、薬物動態、薬物代謝、薬力学、用量反応性、安全性、有効性及びその他の薬理学的作用に関する情報を含めて、十分な考察を記載する。可能な場合には、個々の完了した治験についての要約を記載する。また治験以外の全ての使用結果についての情報、例えば市販後の経験などを記載しなくてはならない。

(a) 薬物動態及び薬物代謝
治験薬の薬物動態について、下記の項目についての情報があれば要約して記載する。
・薬物動態(適切な場合には代謝、並びに吸収、血漿蛋白結合、分布及び排泄を 含む)
・治験薬の基準剤型を用いての生物学的利用性(可能な場合には絶対的及び(又は)相対的利用性)
・被験者のサブグループ(例:性、年齢、臓器機能障害)での検討
・相互作用(例えば、医薬品間相互作用及び食事の影響)
・その他の薬物動態学的データ(例:治験対象集団におけるポピュレーションファーマコキネティックスの成績)

(b) 安全性及び有効性
治験薬と、適切である場合にはその代謝物について、先行する治験(健康志願者及び(又は)患者における治験)にて得られた安全性、薬力学、有効性並びに用量反応性に関する情報の要約を記載し、またその意義についても考察する。複数の治験が完了している場合には、適応疾患ごとに安全性と有効性について総括した要約を作成することにより、明確にデータを説明することができる場合がある。全ての治験(検討した全ての適応を含む)における副作用の表形式の要約を作成すると有用な場合がある。適応疾患やサブグループによって副作用のパターンや発現率に差異がある場合には、考察を加える必要がある。
治験薬概要書には、治験薬及び関連薬剤の以前の使用経験に基づいて、可能性のある危険性や予期される副作用について記載する必要があり、また治験薬の使用に際しての注意事項や特別に監視すべき事項についても記載すべきである。

(c) 市販後の使用経験
治験薬がすでに市販または承認されている国の名前を明記しなくてはならない。市販後に得られた重要な全ての情報(例:製剤組成、投与量、投与経路及び副作用)について要約を記載する。また、承認が得られなかったか、あるいは市販中止又は承認取消がなされた全ての国の名前を明記する。

7.3.7 データの要約及び治験責任医師に対するガイダンス
本項では、非臨床及び臨床データを総合的に考察した結果を記述し、可能な場合には治験薬につき多角的に検討して得られた種々の情報を要約して示す。これによって、治験責任医師は、得られているデータについて最も効果的に理解することができ、かつ今後行われる治験に対するそのデータの意義を評価することができる。
適切と考えられる場合には、治験薬と関連のある薬剤の公表成績についても考察する必要がある。このような考察は治験責任医師が治験における副作用やその他の問題を予測するのに役立てることができる。
本項全体としての目的は、治験責任医師が、治験薬によって起こる可能性のある危険性や副作用、並びに治験に必要とされる特別な検査、観察項目及び注意事項を明確に理解できるようにすることである。かかる理解は治験薬について得られている物理的、化学的、薬剤学的、薬理学的、毒性学的ならびに臨床的知見に基づくものでなければならない。先行する臨床経験及び薬理学的作用に基づいて、さらに治験薬の過剰投与や副作用の認識とこれらに対する処置方法に関しても、ガイダンスを提供するものでなければならない。

7.4 付録1:表紙(例)

治験依頼者名:
治験薬:
治験薬コード番号:
薬剤名:化学名、一般名(承認されている場合)
販売名(法的に許され、治験依頼者が希望する場合)

治験薬概要書

版番号:
発行日:
前版の版番号:
前版の編集日:

 

7.5 付録2:治験薬概要書目次(例)

秘密保全に関する記述(オプション)
署名用の頁(オプション)
1.目次
2.要約
3.序文
4.物理的・化学的及び薬剤学的性質並びに製剤組成
5.非臨床試験成績
5.1 薬理作用
5.2 薬物動態及び薬物代謝
5.3 毒性
6.臨床試験成績
6.1 薬物動態及び薬物代謝
6.2 安全性及び有効性
6.3 市販後の使用経験
7.データの要約及び治験責任医師に対するガイダンス
注:1.公表文献名2.報告書名を各章の終わりに付記。

付録 (ある場合)

8.治験実施のための必須文書

 8.1 序

必須文書とは、治験の実施及び得られたデータの質の評価を可能にする文書類をいう。これらの文書はGCP及び全ての適用される規制要件に対する治験責任医師、治験依頼者及びモニターの遵守状況を証明するのに役立つものである。
必須文書は他の多くの重要な目的にも役立つ。必須文書を治験責任医師/治験実施医療機関及び治験依頼者がそれぞれの側で適切な時期にファイルしておくことは、治験責任医師、治験依頼者及びモニターによる治験の有効な管理に大きく貢献する。またこれらの文書は、治験実施の妥当性及び収集された成績の完全性を確認する過程の一部として、通常、治験依頼者の品質保証部門による監査、又は規制当局による査察の対象となる。
最小限そろえなければならない必須文書リストを以下に示す。なお種々の文書はその文書が作成される治験の段階に対応して、1)治験開始前、2)治験実施中、3)治験の終了又は中止後の3つに分けられる。また各文書の目的と、その文書のファイルを治験責任医師/治験実施医療機関が行うのか、治験依頼者が行うのか、それとも双方が行うのかが記述されている。個々の文書が容易に確認できれば、いくつかの文書をまとめることも可能である。
治験開始時に治験責任医師/治験実施医療機関及び治験依頼者双方において治験マスターファイル(親ファイル)が整備されているものとする。モニターが治験責任医師/治験実施医療機関及び治験依頼者双方の文書を点検し、必要な全ての文書が適切にファイルされていることを確認した時点をもって初めて最終的に治験を終了することができる。
本章に掲げた文書の一部又は全ての文書は、治験依頼者の監査担当者による監査及び規制当局による査察の対象となり得るものであり、それに対応できるように整理しておかなければならない。

-エビデンス全般, 臨床試験, 規制

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