Table of Contents
添付文書とは?
添付文書とは、「医薬品」「医薬部外品」「化粧品」「医療機器」「再生医療等製品」に関する重要事項(警告や使用上の注意など)が記載されている文書です。
「医療用医薬品添付文書」と「一般用医薬品・要指導医薬品添付文書」
医薬品の添付文書には、大きく次の2種類があります。
医療用医薬品添付文書 | 主に、医療関係者向け |
一般用医薬品・要指導医薬品添付文書 | 主に、消費者向け |
添付文書の意義
医療用医薬品の添付文書には、医薬品に欠かせない基本的事項が要約され記されています。
主に、品質、有効性、安全性といった、医薬品を適正に使用するために必要な情報の肝となる部分が記載されているわけですね。
そもそも、薬理作用を有する「物質」単体では「薬」とは言えません。単なる化学物質、と言われても仕方ないかもしれません。
その化学物質に、医療に用いるために必要な情報が付与されていき、どんな目的でどのように使えばよいか、何に注意する必要があるか等といったことがわかるようになることで、単なる「化学物質」は「医薬品」と呼ばれるようになります。
その目的や使い方、注意事項といった内容は、添付文書で「効能、効果、用法、用量」などの各項目として表現されています。
いうまでもありませんが、医薬品はもともとは人体にとって「異物」であり、使い方次第で毒にも薬にもなる可能性を有しています。
添付文書は、非臨床試験や臨床試験を通じて得られた情報をもとに作成され、医薬品の承認申請時に、草案として提出され審査されます。
そして、製造販売後は実際の使用状況で得られた最新の情報をもとに、必要に応じて改訂され洗練されていくことになります。
医薬品の使用経験が増えていくにつれて、いわゆる「育薬」として情報が蓄積されていくことになります。
その一例として、再審査制度、安全性定期報告制度、再評価制度、副作用・感染症報告制度といった公的な仕組みも整備されています。
蓄積された情報は、添付文書改訂というプロセスを経て、医薬品の利用にフィードバックされていくわけです。
添付文書の3つの側面
繰り返しますが、添付文書は法的根拠を有する公文書です。根拠となるのは、医薬品医療機器等法第52条です。
裏を返せば、医薬品医療機器等法第52条に規定された情報が添付文書に記載されていなければ、その化学物質は医薬品として認められません。
製造物責任法(PL法)から見た側面
製造物責任法(PL法)と照らし合わせて医薬品について考えてみましょう。
PL法では、医薬品に副作用があること自体は欠陥製造物とはならないとされています。
ですが、医薬品の説明文書における記載不備は、「指示・警告上の欠陥」とみなされます。そして、賠償責任が発生する場合には、製薬企業がその責任を負うことになります。
医療職として働かない限り、添付文書の実物を見る機会はあまりないかもしれませんが、添付文書に記載できるスペースには限界があるため、添付文書を補足するような文書も合わせて作成されています。
添付文書は、原則としてA4サイズの紙4枚以内、とされています。あくまで「原則」ではありますが、この原則を無視して大幅に大量のページを設けることは現実的に難しいでしょう。
医薬品リスク管理計画(RMP)から見た側面
添付文書のもう一つの側面を理解するために、医薬品リスク管理計画(RMP, Risk Management Plan)と照らし合わせて考えてみましょう。
添付文書は、RMPにおける「リスク最小化計画」のツールとしての顔もあります。
医薬品の適正使用は医療従事者の責務とされており、医薬品を使用する際には添付文書に沿うことが大前提となります。
もし医療過誤訴訟が起こった場合には、特に合理的な理由がない限り、添付文書の記載を守らずに起こった有害事象に関しては、該当する医療従事者の過失が問われることになるでしょう。
リスク最小化のために、添付文書の記載を遵守することが求められている、ということになります。
医療保険制度から見た側面
医療保険制度では、薬価基準に収載された医薬品を、添付文書に従って使用した場合にのみ、診療報酬が認められるのが基本です。
添付文書の記載範囲外で使用された場合は、原則として保険請求されても支払いが認められないのが原則となります。
これがいわゆる「返戻(へんれい)」です。返戻とはその字のとおり、「返される、戻される」ことを指します。差し戻しともいえるでしょう。
保険医療機関が提出したレセプトは、審査支払機関および保険者において審査や確認が行われることになりますが、レセプトの記載内容に不備や誤りなどがあると、レセプトが差し戻されることになります。